最新記事
ヘルス

ビッグサンダーマウンテンで尿路結石が出る!? イグノーベル賞受賞の方法以外には乗馬やヨガなどの画期的治療法も

2023年11月24日(金)16時20分
中尾篤典(医師)・毛内 拡(脳神経科学者) *PRESIDENT Onlineからの転載

「おしっこがしたい!」欲はどこから来るか

膀胱・おしっこ関連でもうひとつご紹介しましょう。人間の基本的な感覚には、味覚、嗅覚、触覚、視覚、聴覚の五感があります。一方で、「おしっこがしたい」と感じる尿意というのは、そのどれにも当てはまらず、第六感(?)というのかもしれません。

膀胱がいっぱいになると尿意を感じ、排尿中には膀胱の中身が減っていくのを感じますが、この臓器の伸び縮みを感じる感覚というのは、これまでよくわかっていませんでした。こうした感覚――つまり体内の力学的な刺激を感知する機能が、私たちの身体に備わっていることが最近明らかになりました。「メカノセンサー」と呼ばれるこの機能についての研究報告は⑤、おしっこが出にくくなったり、逆に頻尿になったりする排尿障害の治療にも役立つ可能性があるとして注目されています。

この研究チームの中心であるアーデム・パタプティアン博士は、2010年に組織の歪みを感知するメカノセンサー「PIEZO2」とその姉妹タンパク質「PIEZO1」を初めて同定した偉い先生で⑥、その功績が認められ2021年のノーベル生理学・医学賞を受賞しています。

PIEZO(ピエゾ)という言葉は、圧や押さえるといった意味のギリシア語らしいのですが、細胞内に情報を伝えるセンサータンパク質の一種です。私たちの身体は、刺激が与えられたときに、その刺激は神経を通じて脳に信号として伝わっていきますが、それは細胞の外側の膜に備わっているイオンチャンネルが働いて、細胞内にイオンを透過させ電気の流れを生み出すことによって信号を伝えているのです。PIEZOはそういったイオンチャネルタンパク質の一種です。つまり、PIEZOはある組織の細胞膜に伸び縮みがあったとき、その圧力や伸展・収縮の刺激を脳に伝えるセンサーなのです。

図表2 メカノセンサーの機能

PIEZOの一種であるPIEZO2は、私たちの全身の様々な臓器や組織に存在していることがわかっています。例えば、肺の伸びを感知して呼吸を調整したり⑦、血管内で血圧を感知したり、また皮膚の触覚を媒介する役割も担ったりしていることが判明しています。このようにPIEZOは私たちの身体の知覚において、非常に重要な働きを持っています。

アメリカの研究チームは、PIEZO2の機能がない遺伝子変異を持って生まれた2人の若い患者の協力を得て、PIEZO2の役割を検討しています。PIEZO2遺伝子に変異のある患者は、知能や読み書きなど日常生活にはほぼ問題がないにもかかわらず、目隠しをされると、ほとんど歩けなくなってしまいます。

社会的価値創造
「子どもの体験格差」解消を目指して──SMBCグループが推進する、従来の金融ビジネスに留まらない取り組み「シャカカチ」とは?
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

イスラエル首相らに逮捕状、ICC ガザで戦争犯罪容

ビジネス

米中古住宅販売、10月は3.4%増の396万戸 

ビジネス

貿易分断化、世界経済の生産に「相当な」損失=ECB

ビジネス

米新規失業保険申請は6000件減の21.3万件、4
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中