「夜中におしっこのため目が覚める」と死亡リスクが2倍に...... 専門医が指摘する寿命とトイレの意外な関係
糖尿病の人、高血圧の人、太っている人は要注意
ほかに、睡眠時無呼吸症候群から夜間頻尿になることもあります。「睡眠時無呼吸」とは、睡眠中に呼吸が10秒以上止まる状態のことであり、1時間当たり5回以上の無呼吸や、呼吸が弱くなる低呼吸が発生していると、睡眠時無呼吸症候群と診断されます。
糖尿病の人や高血圧の人、太っている人などは、睡眠時無呼吸症候群になりやすい傾向があります。
睡眠中の体内では、通常は、体を休息モードにする副交感神経が優位になっています。副交感神経が優位なとき、私たちは尿意を感じにくくなります。健康なときや若いとき、昼間に比べて、夜間にトイレに行くことが少ないのはそのためです。
ところが、睡眠時無呼吸症候群になると、無呼吸状態のときに血液中の酸素濃度が低下し、血圧や心拍数が上昇します。すると、体を緊張させる交感神経が優位になり、膀胱が収縮して、尿意を感じやすくなってしまうのです。
寝る前の習慣を見直すことで、夜間頻尿は改善できる
多くの場合、夜間頻尿は、自然に治ることは期待できません。
たまたま寝る前に水分を摂りすぎた日だけ、夜中に何度かトイレに行きたくなるという人や、夜中にトイレで1~2回起きても、その後熟睡できるため、生活に支障がないという人はあまり心配しなくても大丈夫ですが、毎晩必ず2回以上目が覚めてしまい、睡眠不足になったりストレスがたまったりしているという人は、改善のための対策をとる必要があります。
薬を使った治療も有効ですが、寝る前の習慣を見直すことで、夜間頻尿が改善することもあります。
ここでは、特に気をつけていただきたいポイントのみ、いくつかご紹介しましょう。
「水分をたくさん摂ると健康になる」に医学的な根拠はない
近年、よく耳にするのが「高齢者はできるだけたくさん水分を摂ったほうがいい」「夜、寝る前に水分をたくさん摂ると、血液がサラサラになり、寝ている間の脳梗塞や心筋梗塞などを予防できる」といった情報です。
しかし、医学的には、「寝る前に水分をたくさん摂ることで、夜間や早朝の脳梗塞や心筋梗塞などを予防できる」とは証明されていません。
もちろん、体にとって水分は大事です。極端に水分摂取量を減らすと、たしかに、脱水症状や熱中症などを引き起こし、ひどくなると、循環不全や心筋梗塞、脳梗塞などのリスクも出てきます。
ただ、何事もバランスが大事です。当然のことながら、水をたくさん飲めば、その分、尿の量も増えます。寝る前に水分を摂りすぎることによって夜間頻尿になるケースも、実は少なくないのです。
また、寝る前だけたくさん摂るのではなく、朝から夜までの間に、こまめに水分補給をしてください。なお、温かい飲みものと冷たい飲みものとでは、冷たい飲みもののほうが体が冷え、膀胱の筋肉が縮んで、尿意を感じやすくなります。
夜間頻尿に悩んでいる人は、できるだけ温かい飲みものを口にするようにしましょう。