最新記事
ヘルス

「夜中におしっこのため目が覚める」と死亡リスクが2倍に...... 専門医が指摘する寿命とトイレの意外な関係

2023年8月7日(月)19時00分
平澤精一(医師 テストステロン治療認定医) *PRESIDENT Onlineからの転載

少ない尿量でも尿意を感じてしまう

②の「膀胱畜尿障害」は、膀胱に十分に尿をためることができない状態のことです。

膀胱は骨盤内にある臓器で、腎臓とは尿管でつながっています。腎臓は、細胞の活動の結果生じた老廃物や、体内の余計な塩分などを排出するため、尿を作って膀胱に送り、膀胱にある程度の量の尿がたまると、尿意を感じるようになっています。

膀胱は、尿がたまるまでは風船のように膨らみ、十分にたまったら、収縮して尿を排出します。

通常は200mLほど尿がたまったところで尿意を感じ始め、400mLほどたまってから排尿するのですが、何らかの原因で膀胱畜尿障害になると、膀胱に十分に尿をためることができず、少ない尿量でも尿意を感じてしまうのです。

原因としては、出産や手術、病気、けがなどが挙げられますが、特に多いのが、加齢に伴う「過活動膀胱」や「前立腺肥大症」です。

過活動膀胱は、性別にかかわらず発生する症状です。歳をとると、血管が老化し、血流が悪くなります。すると、膀胱にも、細胞の活動に必要な栄養や酸素が行き渡らなくなり、膀胱のしなやかさや弾力性が失われてしまいます。

男性特有の病気である恐れがある

さらに、血流が悪くなると、膀胱壁の神経がダメージを受け、排尿筋も過活動になります。その結果、膀胱に十分に尿をためられなくなり、かつ膀胱が過敏に反応して、少ない尿量でも尿意を感じてしまうのです。

加齢によって骨盤底筋が衰え、骨盤の上にある臓器を支えられなくなることも、過活動膀胱の原因となります。臓器が下垂して膀胱や尿道を圧迫し、尿意を感じやすくなるのです。

一方、前立腺肥大症は、男性特有の病気です。前立腺は、膀胱のすぐ下に、尿道を取り囲むように存在している、クルミのような形をした器官で、生殖に関わる働きや排尿をコントロールする働きがあります。

この前立腺が何らかの原因で肥大すると、尿道が圧迫され、ちょっとした刺激で尿意を感じたり、きちんと排尿ができず、残尿が生じてしまったりするのです。

原因は、まだ完全に明らかになってはいませんが、加齢に伴うテストステロンの分泌量の低下が、前立腺肥大を招いているのではないかと考えられています。

睡眠障害で夜間頻尿になり、眠りがさらに浅くなる悪循環

最後に、③の「睡眠障害」についてお話ししましょう。

「寝つきが悪い」「熟睡できない」「夜中に目が覚めてしまう」など、睡眠に関する悩みを抱えている高齢者は少なくありません。

本書(第5章)でお伝えしたように、人間の睡眠のリズムにはメラトニンというホルモンが大きく関わっていますが、メラトニンの分泌量は、子どものころをピークに徐々に減っていき、高齢者の体内ではわずかな量しか作られません。そのため、寝つきが悪くなったり、眠りが浅くなり、ちょっとしたことで目が覚めたりするようになります。

さらに、高齢になり、社会活動から遠ざかると、日中の活動量が低下するため、体が必要とする睡眠の量が減りますし、狭心症や関節リウマチなど、高齢者がかかりやすい病気からくる痛みや辛さも睡眠を妨げます。

こうした原因で夜中に目が覚めたときに、たまたま尿意を感じた結果、尿意で目が覚めたと錯覚し、「目が覚めたときにトイレに行く」ことが習慣化して、夜間頻尿になることが少なくありません。

そして、睡眠障害が原因で夜間頻尿になり、眠りがさらに浅くなるという悪循環に陥ってしまうのです。

事件
ニューズウィーク日本版メンバーシップ登録
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

高市首相、応援演説で円安メリットに言及 米関税のバ

ワールド

米政府機関の一部が閉鎖、短期間の公算 予算案の下院

ビジネス

中国1月製造業PMIが50割れ、非製造業は22年1

ワールド

トランプ氏、労働統計局長にベテランエコノミスト指名
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市 vs 中国
特集:高市 vs 中国
2026年2月 3日号(1/27発売)

台湾発言に手を緩めない習近平と静観のトランプ。激動の東アジアを生き抜く日本の戦略とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「副産物」で建設業界のあの問題を解決
  • 2
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵士供給に悩むロシアが行う「外道行為」の実態
  • 3
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界でも過去最大規模
  • 4
    日本はすでに世界第4位の移民受け入れ国...実は開放…
  • 5
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパ…
  • 6
    麻薬中毒が「アメリカ文化」...グリーンランド人が投…
  • 7
    日本経済を中国市場から切り離すべきなのか
  • 8
    秋田県は生徒の学力が全国トップクラスなのに、1キロ…
  • 9
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 10
    「外国人価格」で日本社会が失うもの──インバウンド…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 3
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界でも過去最大規模
  • 4
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 5
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
  • 6
    一人っ子政策後も止まらない人口減少...中国少子化は…
  • 7
    スペースXの宇宙飛行士の帰還が健康問題で前倒しに..…
  • 8
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 9
    町長を「バズーカで攻撃」フィリピンで暗殺未遂、大…
  • 10
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 8
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中