最新記事
ヘルス

「夜中におしっこのため目が覚める」と死亡リスクが2倍に...... 専門医が指摘する寿命とトイレの意外な関係

2023年8月7日(月)19時00分
平澤精一(医師 テストステロン治療認定医) *PRESIDENT Onlineからの転載

夜間頻尿は健康寿命を左右する重要な問題だ

すると、当然のことながら、意欲や集中力が低下する、疲れが取れにくくなる、昼間に眠くなる、イライラしやすくなる、といったことが起こりやすくなります。仕事でミスをすること、自動車を運転しているときに集中できなかったり眠くなったりして、事故を起こしてしまうこともあるかもしれません。

体のさまざまなホルモンのバランスも、7時間眠ることで整うといわれています。つまり、夜間頻尿で睡眠不足に陥ると、ホルモンのバランスが乱れ、心身にさまざまな不調が表れるおそれがあります。

こうした心身の不調から、外出したり人に会ったりするのがおっくうになったり、うつ状態に陥ってしまったりする人もいるでしょう。70歳以上の人にとって夜間頻尿は、寿命を、そして健康寿命を左右する、非常に重要な問題なのです。

では、一体なぜ、夜間頻尿が死亡率の増加につながるのでしょうか?

まず考えられるのが、夜中にいきなり冷たい便座に座ることで、急激な温度変化に伴って血圧が変動し、脳出血や脳梗塞、心筋梗塞などが引き起こされることです。排尿によって血管が拡張され、血圧が下がり、心臓から脳へ送られる血液の量が急激に減って、脳が酸素不足になってしまう「排尿失神」が起こることもあります。

原因は夜間多尿、膀胱蓄尿障害、睡眠障害の3つ

では、なぜ年齢を重ねると、夜間頻尿になってしまうのでしょうか?

その原因についてお話ししましょう。夜間頻尿の原因には、主に次の3つのタイプがあると考えられています。

①夜間多尿
②膀胱蓄尿障害
③睡眠障害

そして、糖尿病や高血圧、肥満、あるいは心疾患や腎疾患の治療薬の服用などが引き金となっているケースもありますが、多くの場合、ホルモンの減少、腎臓機能や膀胱機能の低下、筋力の低下、睡眠のリズムの乱れなど、加齢に伴う体の変化が、これら3つの原因を引き起こしています。

ホルモンバランスの乱れ、筋力の低下

ここからは、夜間頻尿の3つの原因について、もう少し詳しくご説明しましょう。まず、①の「夜間多尿」は、夜間に作られる尿量が多い状態のことです。

通常、人間の一日の尿量は約1000~2000mL、一回の排尿量は約200~400mLであり、排尿回数は、日中は5~7回程度、夜間(就寝中)は0~1回程度です。

しかし、睡眠前に水分を過剰摂取したり、心疾患や腎疾患の患者さんが、睡眠前に利尿薬を服用したり、加齢により、尿量を調節する抗利尿ホルモンの分泌バランスが乱れたりすると、夜間の尿量が増えてしまうのです。

加齢による筋力や血管の収縮力の低下も、夜間多尿の原因となります。筋力や血管の収縮力が低下すると、血液の循環が悪くなり、下半身に水分がたまります。その状態のまま横になると、下半身にたまっていた水分が上半身に移動し、心臓に負担がかかります。

すると体は、排尿を促す「利尿ペプチド」というホルモンを分泌し、余計な水分を体の外に出そうとするのです。

なお、一日(24時間)に作られる尿量のうち、夜間(就寝中)に作られる量が、65歳以上の場合は3分の1(33%)以上、若年者では5分の1(20%)を超える場合、夜間多尿であるとされています。

対談
為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 セカンドキャリアの前に「考えるべき」こととは?
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米上院通過の税制・歳出法案、戦略石油備蓄の補充予算

ビジネス

物言う株主、世界的な不確実性に直面し上半期の要求件

ワールド

情報BOX:日米関税交渉の経緯、協議重ねても合意見

ワールド

豪小売売上高、5月は前月比0.2%増 予想下回る
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 2
    ワニに襲われ女性が死亡...カヌー転覆後に水中へ引きずり込まれる
  • 3
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。2位は「身を乗り出す」。では、1位は?
  • 4
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 5
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 6
    世紀の派手婚も、ベゾスにとっては普通の家庭がスニ…
  • 7
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 8
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 9
    あり?なし? 夫の目の前で共演者と...スカーレット…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 1
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門家が語る戦略爆撃機の「内側」と「実力」
  • 4
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた…
  • 5
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 6
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 7
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 8
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 9
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 10
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中