最新記事
医療

「日本人は世界一アルツハイマー病に罹りやすい」のに医療保険制度が障害に 「調子が悪くなったら病院へ行く」では遅すぎる

2023年7月14日(金)15時45分
牧田善二(AGE牧田クリニック院長) *PRESIDENT Onlineからの転載
アルツハイマー症の患者のMRI画像

アルツハイマー症の患者のMRI画像 Atthapon Raksthaput - shutterstock


日本におけるアルツハイマー型認知症は認知症患者の半数を占め、今後も増加の一途をたどることは必至だ。糖尿病専門医の牧田善二さんは「アルツハイマー病の発症メカニズムは、糖尿病とそっくりで、予備軍が多い。また現状、アルツハイマー病を発症してから治す方法はなく予防が重要ですが、発症前の段階での治療は今日の日本の医療保険制度ではできません」という――。

※本稿は、牧野善二『糖尿病専門医だから知っている アルツハイマー病にならない習慣』(フォレスト出版)の一部を再編集したものです。

世界一、アルツハイマー病に罹りやすい日本人

日本人は世界一、アルツハイマー病(アルツハイマー型認知症)に罹りやすい国民と言えます。

※アルツハイマー型認知症は認知症の半分以上を占める。

理由の1つは、日本人の寿命が長いことにあります。アミロイドβは、アルツハイマー病の症状が現れる20年くらい前から少しずつ脳に蓄積していることがわかっています。

たとえば、60歳頃から蓄積が進んでいっても、70代で亡くなるとすればアルツハイマー病に悩まされることはないかもしれません。でも、90代まで生きることができたらどうでしょう。発症してしまう可能性は大きくなります。

長寿は嬉しいことだけれど、それだけ「老化」の問題とも戦っていかねばならず、当然ながら脳の老化にも襲われるわけです。

もう1つ、とても重要なのが、日本には糖尿病患者が多いということです。糖尿病とアルツハイマー病は切っても切れない関係にあるのです。

現在日本には、1000万人を超える糖尿病患者がおり、さらに、糖尿病予備軍が1370万人いるとされています。糖尿病には、生まれつきインスリンが分泌されない「1型糖尿病」と、長年の生活習慣によって引き起こされる「2型糖尿病」があり、日本人患者のおよそ95%は2型糖尿病に罹患しています。

そして、驚くことにアルツハイマー病の発症メカニズムは、2型糖尿病とそっくりなのです。

そのため、アルツハイマー病を「糖尿病性認知症」と呼ぶべきだという意見も出ているほどで、実際に「3型糖尿病」と表現する医療関係者もいます。

発症メカニズムがそっくりなのだから、2型糖尿病の人やその予備軍にある人はアルツハイマー病も発症しやすくなると言えます。

糖尿病は日本を含めアジア圏でとくに増えており、それはアルツハイマー病の増加パターンとも一致します。

要するに、糖尿病患者やその予備軍が多くて、これからますます高齢社会を迎える日本は、アルツハイマー病大国となっていく可能性が大きいということです。このことについて、私は相当な危機感を抱いています。

試写会
米アカデミー賞候補作『教皇選挙』一般試写会 30組60名様ご招待
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 8
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 9
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 10
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中