最新記事
医療

「日本人は世界一アルツハイマー病に罹りやすい」のに医療保険制度が障害に 「調子が悪くなったら病院へ行く」では遅すぎる

2023年7月14日(金)15時45分
牧田善二(AGE牧田クリニック院長) *PRESIDENT Onlineからの転載

誰でも罹る、若くても罹る

認知症の中でも、レビー小体型認知症や前頭側頭型認知症などは男性に多い傾向があります。逆に、アルツハイマー病は女性のほうが男性より2.5倍も多いことがわかっています。

そこには、ホルモンのはたらきが関わっています。

エストロゲンという女性ホルモンは、あらゆる病気から女性を守っています。閉経前の女性に心筋梗塞など血管性疾患が少ないのも、エストロゲンのおかげです。エストロゲンは、脳にも良いはたらきをしてアルツハイマー病の予防に役立っています。

ところが、閉経するとエストロゲンの分泌がなくなってしまうため、アルツハイマー病のリスクが高まってしまうのです。

一方、男性はどうでしょう。男性ホルモンであるテストステロンが、アロマターゼという酵素によってエストロゲンに換えられる仕組みが男性の身体には備わっています。

そして、男性の場合、年齢とともにテストステロンの分泌は減ってくるものの、すっかりなくなったりはしないので、エストロゲンもそれなりにつくられます。

女性も、閉経後しばらくは副腎から男性ホルモンのテストステロンがわずかに分泌され、それによりエストロゲンをつくることができてはいます。しかし、70歳を迎える頃には、テストステロンの分泌もなくなってしまいます。

こうしたことから、アルツハイマー病は女性が多いのです。

とはいえ、男性のアルツハイマー病患者もたくさんいるので、ゆめゆめ油断してはいけません。とくに、糖尿病を患っていたり、その予備軍であるなら要注意です。

また、若いからといって安心はできません。

最初に発見されたドイツの患者さんはまだ51歳でした。現在、65歳以下で発症した認知症は「若年性認知症」と呼ばれ、日本には約3万6700人の患者がいると推計されています。そのうち、「若年性アルツハイマー病」が52.6%と半分以上を占めています。

若年性アルツハイマー病は、20代で発症する例もあり、患者の多くが40~50代の働き盛りです。アルツハイマー病について、自分は例外だと油断していられる人などいないのです。

「グレーゾーン」と呼ばれる軽度認知障害

アルツハイマー病に限らず認知症全般について、「軽度認知障害」というグレーゾーンの段階があることがわかっています。

軽度認知障害は、専門家の間ではMCI(mild cognitive impairment)と呼ばれており、いわば認知症予備軍と考えることができます。日本には現在、400万人ものMCI該当者がいるとされ、それは65歳以上の高齢者人口の13%にも相当します。

MCIは、そのまま放置すれば約半数の人が認知症を発症すると考えられている一方で、この段階で適切な予防治療を行なうことができれば、発症を防いだり遅らせたりすることも可能だとわかっています。MCIは、図表1にあるような分類がなされています。

図表1 MCI(軽度認知障害)区分型
出典=『アルツハイマー病にならない習慣』(フォレスト出版)


まず記憶障害があるかないかで、「健忘型」「非健忘型」に分かれ、さらに、記憶障害のみに留まっているか、空間機能、言語機能、実行機能などほかの機能にも低下が見られるかによって「単一領域」「多重領域」に分かれます。

キャリア
AI時代の転職こそ「人」の力を──テクノロジーと専門性を備えたLHHのコンサルティング
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

仏首相、年金改革を27年まで停止 不信任案回避へ左

ビジネス

米ウェルズ・ファーゴ、中期目標引き上げ 7─9月期

ビジネス

FRB、年内あと2回の利下げの見通し=ボウマン副議

ビジネス

JPモルガン、四半期利益が予想上回る 金利収入見通
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本人と参政党
特集:日本人と参政党
2025年10月21日号(10/15発売)

怒れる日本が生んだ「日本人ファースト」と参政党現象。その源泉にルポと神谷代表インタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道されない、被害の状況と実態
  • 2
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 3
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ海で「中国J-16」 vs 「ステルス機」
  • 4
    【クイズ】アメリカで最も「死亡者」が多く、「給与…
  • 5
    「中国に待ち伏せされた!」レアアース規制にトラン…
  • 6
    あなたの言葉遣い、「AI語」になっていませんか?...…
  • 7
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 8
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    連立離脱の公明党が高市自民党に感じた「かつてない…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 3
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 4
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 5
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 6
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決…
  • 7
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 8
    ウクライナの英雄、ロシアの難敵──アゾフ旅団はなぜ…
  • 9
    「中国のビットコイン女王」が英国で有罪...押収され…
  • 10
    あなたは何型に当てはまる?「5つの睡眠タイプ」で記…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中