最新記事
動物

19歳のロシア女性「ヒグマが私を食べている!」と実況 人肉の味は親熊から仔熊に引き継がれる

2023年3月31日(金)14時30分
中山茂大(ノンフィクション作家・人力社代表) *PRESIDENT Onlineからの転載

「お母さん、痛い! 助けて!」

娘のオルガは60~70メートルほど逃げたが、そこでヒグマに追いつかれた。ヒグマはオルガの足をつかみ、彼女は悲鳴を上げて助けを求めた。

しかし周りには誰もいない。そこでオルガは携帯電話で母親に電話し、こう伝えた。

「お母さん、ヒグマが私を食べている! お母さん、痛い! 助けて!」

ヒグマに襲われたと叫ぶ娘の声を聞いて、母親は最初、冗談を言っていると思った。しかし、電話から娘の声のほかに、獣のうなり声や、むさぼり食う音まで聞こえてきて、ようやく冗談ではないことに気づき、恐怖と愛する我が子を助けることができない絶望感に襲われた。

電話は1時間も続いた

オルガと母親の電話はそれから1時間も続いたという。人は極限状態になると自身の母親に助けを求めるものなのだろう。オルガは母親に、ヒグマが今彼女を食べていると叫び続けた。

オルガによると、3匹の仔熊も「食事」に加わっていたという。

約1時間後、オルガはとうとう「もはや痛みを感じなくなった」と話した。

「お母さん、色々とごめんね。許してね。大好き」

最後にその言葉を残し、オルガからの電話は途絶えた。

ヒグマはイゴールの帽子をくわえていた

イゴールの兄アンドレイが現場に到着したのは午後1時頃だった。

その時、現場にはまだイゴールを喰ったヒグマがいた。アンドレイはそのヒグマを目撃したが、丸腰の彼には何もできなかったという。

アンドレイはすぐさまイゴールの妻タチアナに電話し、夫が死んだことを伝えた。

それから程なくして現場に警察と救急車が到着した。

また、事件はロシアの野生生物保護庁にも報告され、ハンターが急行。彼らは死体の上にいるメスのヒグマを見つけた。そのヒグマの歯には、殺害されたイゴールの帽子が挟まっていたという。

ハンターはすぐヒグマに向かって銃を発射した。ヒグマは傷を負ったが逃げ、ハンターたちは木の小屋を作り、朝まで現場に残ることにした。

胃の中からイゴールとオルガの肉が...

翌日の8月14日(日)、ハンターたちの手によって母熊1頭、仔熊3頭が射殺された。仔熊は2歳くらいで、イヌよりも体が大きかった。

射殺されたヒグマ4頭は、エリゾボ地区警察署で解剖された。その胃の中からは犠牲になったイゴールとオルガの肉が出てきたという。

8月17日、イゴールとオルガはコリャーキ村で埋葬された。オルガはこの年、教育大学を卒業し、心理学者としてモスクワ人文科学現代大学に入学していた(ジャーナリストのIgor Kravchukの動画より)。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏とゼレンスキー氏が「非常に生産的な」協議

ワールド

ローマ教皇の葬儀、20万人が最後の別れ トランプ氏

ビジネス

豊田織機が非上場化を検討、トヨタやグループ企業が出

ビジネス

日産、武漢工場の生産25年度中にも終了 中国事業の
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口の中」を公開した女性、命を救ったものとは?
  • 3
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 4
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 5
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 6
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 7
    足の爪に発見した「異変」、実は「癌」だった...怪我…
  • 8
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 9
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 10
    日本では起こりえなかった「交渉の決裂」...言葉に宿…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 3
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 4
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 8
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 9
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 10
    【クイズ】世界で最もヒットした「日本のアニメ映画…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中