最新記事

メンタルヘルス

うつ病とは「心のバッテリー」が上がること...「考えすぎ」がうつ病に変わるメカニズムは?

2022年11月25日(金)17時36分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
うつ病

Tatyana-iStock

<「考えすぎ」と「心配」はどう違うのか? 今、心理学の分野で注目されている「考えすぎ(Overthinking)」について>

体に異変を感じて、ネット検索をした結果、悪い病名を発見。すると悪い情報ばかりを探すことがやめられない......。そういう経験は誰でもあるだろう。

しかし、単なる心配と「やっかいな考えすぎ」との境界線はどこにあるのだろうか? 今、心理学の分野で注目されている「考えすぎ(Overthinking)」とは何か? 不安障害が専門の臨床心理士グウェンドリン・スミスによる、『考えすぎてしまうあなたへ』(CCCメディアハウス)より抜粋する。

◇ ◇ ◇


近年、医療現場では「考えすぎ」という言葉は日常的に使われるようになりました。人びとに「『考えすぎ』と心配は、同じですか?」と尋ねると、私の同僚や患者を含めた多くが、「同じだけど違う」と答えるはずです。時には、両方の要素が少しずつ組み合わさっていることもあります。それは次のような場合です。

私は考えすぎてしまう。それ自体は問題ないが、だんだん心配し始める。それから不安になり、次はその「不安である」という状態に悩みだす。今度はあらゆることを考えすぎるようになり、これまでの自分の行為を思い返す。しまいには、これからやろうとすることについても不安になってくる。

あなたがこの困った状態から抜け出すために、この複雑な心理現象に「やっかいな考えすぎ」という名前をつけましょう。この用語を使えば、ほとんどの事柄をカバーすることができます。

医師は、「考えすぎ」を「繰り返し思い出すこと」と同じ意味だと考えがちです。「患者が、自身を苦しめている症状に着目し、その解決策を見つけようとするよりも、原因や結果にばかり目を向ける傾向にある」と思っているからです。

「考えすぎ」が不安と結びつくのは、たとえば悪友とつるむのに似ている―医師たちはそのようにも考えています。

健康不安の例

その典型的な例が、健康不安(かつては「心気症」と呼ばれた精神状態)です。「やっかいな考えすぎ」は健康不安に大きく関係しています。たとえばこんな感じです。

朝、あなたは身支度をしていて、歯を磨こうとします。いつものように、まずは糸ようじを使っていると、血が少し出ていることに気づきました。

舌を動かして口の中を探ってみると、小さなしこりのようなものがありました。あなたは心配し始め、その瞬間に不安が生まれます。通勤の車が渋滞に巻き込まれる時間までに、急いでグーグル先生に質問して、安心材料を探します。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

豊田織機の非公開化報道、トヨタ「一部出資含め様々な

ビジネス

中国への融資終了に具体的措置を、米財務長官がアジア

ビジネス

ベッセント長官、日韓との生産的な貿易協議を歓迎 米

ワールド

アングル:バングラ繊維産業、国内リサイクル能力向上
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 7
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 8
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 9
    ビザ取消1300人超──アメリカで留学生の「粛清」進む
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中