最新記事

日本社会

なぜ日本の富裕層のインテリアはダサいのか? 急成長する家具チェーンの社長が考える根本原因とは

2022年9月11日(日)12時00分
北村甲介(リビングハウス代表取締役社長) *PRESIDENT Onlineからの転載

リビングハウスの北村甲介社長

リビングハウスの北村甲介社長 撮影=小倉和徳

ヒアリングの結果、いまのダイニングスペースは、白壁、白色光の殺風景な状態だということが分かりました。そうであれば、椅子という「点」にどれだけこだわっても、それほど効果はないでしょう。それよりも、照明を暖かい色のものに変えたり、絵画を壁にかけたりする方が、お客様の理想の空間に、より近づくことができるかもしれません。

お客様が本当に求めているものは「前よりもすてきな椅子」ではなかったわけです。極端なことを言えば、机を買いに来られたお客様に、「机じゃなくて絵を買った方が良いんじゃないですか」なんていうこともあるのです。一人ひとりのお客様から、言外の隠れたニーズをいかに汲み取り、解決策をご提案できるか。これが、売り手に求められていることだと思います。

インテリア文化後進国だからこそ伸びしろがある

たいへんありがたいことに、社長に就任した2011年から10年余りで業績は大きく伸び、事業は拡大しています。店舗数は4倍(7→31店)、売り上げは3倍(約14億→約42億円)、社員数は5倍近く(49→228人)となっています。

世の中にはぼくたちよりも立派な会社がたくさんあります。でも、「こういうふうになりたい」と思えるロールモデルは正直、なかった。それは他社が劣っているということではなくて、目指しているものが違ったからだと思います。

残念ながら日本は、「空間を心地よくする」という意識においては、後進国です。でも、だからこそ、伸びしろは大きい。ぼくたちは家具を売っていますが、実は自分たちを「家具屋」だとは思っていません。「日本を空間時間価値の先進国にする」そんな思いでこれからも走り続けたいと思います。

(構成=プレジデントオンライン編集部 廣瀬奈美)

北村甲介

リビングハウス代表取締役社長
1977年大阪市生まれ。慶應義塾大学商学部を卒業後、ベンチャー企業に就職。その後、デンマーク家具会社の日本法人で家具配送・組み立ての修行を積み、26歳で父が経営するリビングハウスへ入社。2011年に33歳で代表取締役社長となる。著書に『「かなぁ?」から始まる未来 家具屋3代目社長のマインドセット』(幻冬舎)がある。


※当記事は「PRESIDENT Online」からの転載記事です。元記事はこちら
presidentonline.jpg




今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米バークシャー、24年は3年連続最高益 日本の商社

ビジネス

ECB預金金利、夏までに2%へ引き下げも=仏中銀総

ビジネス

米石油・ガス掘削リグ稼働数、6月以来の高水準=ベー

ワールド

ローマ教皇の容体悪化、バチカン「危機的」と発表
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 5
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 9
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中