最新記事

日本社会

なぜ日本の富裕層のインテリアはダサいのか? 急成長する家具チェーンの社長が考える根本原因とは

2022年9月11日(日)12時00分
北村甲介(リビングハウス代表取締役社長) *PRESIDENT Onlineからの転載

インテリアのショールーム

写真提供=リビングハウス

部屋も同じです。ぼくが見てきた「おしゃれな家」に住むお客様に共通していたことがあります。それは家を「飾る」感覚がある、ということです。たとえば、一面真っ白の壁ではなく、一部に柄や色が入った壁紙を使う、絵画や花、オブジェを飾るといった具合です。自分たちが住む環境を、より居心地よく、気持ちが高鳴る空間にするために、モノを買い足していく。寒くないけれど、おしゃれのためにスカーフを巻く、そんな感覚かもしれません。着こなしならぬ「住みこなし」力、そんなものを感じました。

「新築が一番いい」垢抜けない根本的な理由

そんなのセンスじゃないかというご指摘が飛んできそうですが、ぼくが感じたのは、文化的背景の違いです。どういうことかというと、実は、「おしゃれな家」に住んでいる大半が海外から来られたお客様だったのです。

ここには1つ、大きな考え方の違いがあると思っています。

みなさんは、新しい家と、古い家、どちらに魅力を感じるでしょうか。

今でこそ、中古のリノベーション物件だったり、ファッションでも古着を「中古」ではなく「ヴィンテージ」と呼んだり、新しくないものに価値を感じる人が増えてきました。

とはいえ、やはり「新しいものがいい」という感覚が、日本人の中では根強いと感じます。この感覚は、部屋や家具に対しても同じです。新築時の真っ白の壁を保つために、持ち家にもかかわらず、絵を飾るのに穴をあけることすら抵抗を感じる。せっかく買ったソファだけど、汚したくないからカバーをかける......。手を入れたり、使い込んだりすることを、「汚れる」というようにマイナスにとらえる人が多いのではないでしょうか。

欧米ではむしろ手を加えた状態が評価される

一方で、欧米では、こうした状態をむしろ「味」としてポジティブに受け入れる感覚が強い。日本では、新築のマンションを買って、玄関の鍵を開けたその瞬間に、価格が3割引きになるのが一般的ですが、欧米では、中古の物件の方が価値が高い、という状況が珍しくありません。ペンキで塗り替えた壁や、時を経て色味が変わった床など、暮らしの中で、使い込み、住みよい環境のために手を入れてきた、その状態に価値があるわけです。

こうした価値観の違いは、インテリアに対する考え方にもつながっています。

本来であれば、家を買ったその日、最初の家具をそろえた日というのは、住まいを作っていくその「スタート」にすぎません。そこから、「飾り」を増やしていきながら、理想の空間を創り上げていくわけです。つまり、家の「ピーク」は、そうして手を入れてきた「今」やその先にあるのです。

ところが、大半の日本人にとって、家の「ピーク」は、最初にあります。新築、新品の時が一番良くて、あとは家も家具も劣化し、価値が下がっていくだけという考え方です。だから、家には余計な手を入れたくない。劣化した家具を買い替えるときも、「空間をつくっていく」という意識よりも、単純に古くなったソファAを新しいソファBに替えようとする。だから、家具にいくらこだわっても、空間自体の価値という意味では最初のピークよりも上回ることがないのです。

「点→点」売り方にも問題があった

これまで、日本人の家が垢抜けないその理由を、文化的背景からお話してきました。でも実は、それだけではありません。垢抜けない原因は、家具を売る側にもあると思っています。

みなさんはこれまで、家具を買うときにどのような接客を受けてこられたでしょうか。イメージしていただくために、1つの例をご紹介しましょう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

再送-米、ロ産石油輸入巡り対中関税課さず 欧州の行

ワールド

米中、TikTok巡り枠組み合意 首脳が19日の電

ワールド

イスラエルのガザ市攻撃「居住できなくする目的」、国

ワールド

米英、100億ドル超の経済協定発表へ トランプ氏訪
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 3
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く締まった体幹は「横」で決まる【レッグレイズ編】
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 6
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 7
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    「この歩き方はおかしい?」幼い娘の様子に違和感...…
  • 1
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 2
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 10
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中