「パパ活」はドイツでは通用しない 若いだけで女子をもてはやす日本の不思議
日本女性にかけられた若さの呪い
そこには「今の若い貴女には価値があるけれど、それは一瞬のうちよ。それをちゃんと自覚してね」というメッセージが込められていた気がします。まさに桃色吐息(歌詞「金色 銀色 桃色吐息 きれいと 言われる 時は短すぎて」)のような世界です。
筆者がドイツにいた頃、そういった褒め方をされることはありませんでした。ドイツでは人を褒める際に「若さ」に言及する習慣はないからです。それが関係しているのか「若い女性とデートしたい」と考える男性もあまりいない印象です。
女性が若いからといって「チヤホヤ」は味わえませんが、人生を長いスパンで考えると、そのぶん女性として生きやすいともいえます。なぜなら、ドイツでは若い女性に対しても、年齢を重ねた女性に対しても、扱いにさほど差がないわけですから。
若い女性が重宝されるのは「子供を産む」ため?
日本では、女性は子供を産むこととつなげて考えられがちです。例えば日本の婚活市場では、中年男性であっても「子供が欲しいので若い女性と結婚したい」と考える人がいます。妊娠する確率が高いので若い女性のほうが価値がある――。そんな考え方が背景にあるのだと思います。
ドイツでは「子供を持ったことを後悔する女性」にインタビューしたイスラエルの社会学者Orna Donath氏の論文が話題になったことがあります。それ以来、ドイツの人たちは「子供を持つ=幸せ」という昔ながらの感覚から脱却しつつあります。
ドイツの女性たちは、「#Regretting Motherhood」(母親になったことを後悔する)のハッシュタグのもと自身の体験をSNSで発信。著述家であるSarah Fischer氏は『DIE MUTTERGLÜCKLÜGE Regretting Motherhood - Warum ich lieber Vater geworden wäre』〔「母親であることがハッピーだという嘘 Regretting Motherhood ~私が(母親ではなく)父親になりたかった理由~」〕という本を出し、これも話題となりました。子供をほしいと思い、いざ母親になってみると理不尽の連続だったことが赤裸々なエピソードでつづられています。
子供を作ることを絶対視しなくなった今、ドイツの人たちは「若い女性のほうが子供を産める。だから価値がある」とは考えません。それにドイツの男性は、どちらかというと成熟した女性を好む傾向があります。
とはいえ20代の若い女性とデートをしたがる中高年男性がいないわけではありません。しかし、ドイツの社会では若い女性が好きだと公言することは、一般的な感覚として恥ずかしいことだとされています。
年の差カップルへの「厳しい目」
他にも文化的に日本と大きく異なることがあります。年の差カップルへの視線です。ドイツでは、男性が明らかに自分よりも何十歳も年下の女性を連れて歩いていると、時に冷たい視線を浴びることがあります。好奇の目で見られることさえあるのです。
偏見もあるのでしょうが、純粋な恋愛とは思われません。「お金にモノを言わせているのだろう」と見なされ、あまり好意的には捉えられないのです。
筆者の父親はドイツ人ですが、日本人の母親よりも20歳年上でした。筆者が10代の頃、両親とレストランなどに外出すると周囲からのそのような「視線」を感じることがありました。それが嫌で思春期の頃は両親との外出をよく拒否していたものです。
かつて「ザ・ドリフターズ」のメンバー、加藤茶さんは45歳もの年齢差婚で耳目を集めました。それが「ほほえましい話題」になるわけですから、日本のほうがその点においては優しいのかもしれません。