休暇「2週間×年4回」+夏休み2カ月はなぜ可能なのか?
A COUNTRY OF VACATION
パリのカフェに観光客が戻るのはいつ? MAZIARZ/SHUTTERSTOCK
<コロナ危機の在宅勤務が突き付ける「働く」と「休む」の境界線。休めない病の日本人には信じられない、有休取得率100%を実現するフランス流「発想の逆転」とは? 本誌「日本人が知らない 休み方・休ませ方」特集より>
フランス人は常にバカンス(長期休暇)の話をしている......とよく言われるが、実際に住んでみると、これはそのまま真実だ。この国の大多数の国民の生活は、バカンス計画を中心に回っている。
なぜそうなるのかは、カレンダーを眺めると分かる。フランスは義務教育が3歳入園の公立幼稚園(保育学校)から始まるが、そこから大学まで教育機関全てが全国共通の「学校カレンダー」に従って授業を行う。9月に始まり7月初めに終わる年度のカレンダーには、2週間の季節休暇が約2カ月に1度、計4回ある。つまり1回の休暇が終わると、1カ月半後には次の休暇がやって来るのだ。加えて夏休みは約2カ月もある。
子供のいる世帯はそれに合わせて有給休暇を取り、バカンスの予定を組む。保護者が休めないときは、学校のない子供のために学童保育の予約を入れる。それらもろもろの手配や予算繰りで、頭の中には常に「次のバカンス」がある。
子供のいない家庭はというと、労働者には国の法律で年間30日間の有給休暇権があり(1カ月働くと2.5日の有給休暇が発生する)、雇用主は取得申請を拒否できない。権利は漏れなく使い倒すフランスにおいて、有休取得率はほぼ100%だ。
とはいえ、休暇は同僚同士が時期をずらして取得しなければならないので、子供がいない世帯でも「学校カレンダー」を意識せざるを得なくなる。そうして、みんなが文字どおり「常にバカンスの話をしている」という事態になるわけだ。
彼らにとってバカンスの目的は、日常を忘れ、疲れを癒やすこと。だから、プランの第一候補はまず旅行だ。国内、国外を問わず、実家に友達の家やホテルに貸し家、キャンピングにと、日常を離れるために移動しまくる。日本のゴールデンウイークやお盆休みの大移動が、年に5回あると思ってもらうといい。バカンス予算を捻出できない世帯の子供向けには、社会福祉政策の一環として、多くの自治体や慈善団体が学童キャンプを主催している。
バカンスは「労働者の権利」
バカンスはフランスの人々の大きな労働モチベーションで、それをやり繰りするために日々節約と貯金をする。夏のバカンス予算の世帯平均額は、移動、宿泊、滞在先のレジャー代金で2201ユーロ(約26万円/仏市場調査会社イプソスの2019年調査)というデータがあるが、出費はそれだけではない。
旅先では現地の名物料理を楽しみたいし、遅い日暮れのお供にはビールやワインも欠かせない。バカンス中に読む本、着る服、家族や友人へ持参するプレゼント、旅の思い出に持ち帰るお土産......財布のひもは緩む一方だ。