最新記事
日本社会

小池都知事は「震災時の朝鮮人虐殺」を認める「メッセージを出してくれると思う」東大・外村教授

2024年8月29日(木)15時53分
大橋 希(本誌記者)

これは人権にかかわる、つまり人の命にかかわる問題です。

昨年、震災100年でいろいろな人の話を聞いたが、在日3世の人が「災害が起きて避難所に100人集まったとして、救援物資が90人分だったら除外されるのは自分だろう。自分はいいとしても自分の子供がそうされたら辛い」という話をしていた。


怖くて避難所に行けない在日コリアンがいるなかで、「震災虐殺があったのか分かりません」という態度を都知事が取ったり、『In-Mates』を上映してはいけないと都の人権部が言うとしたら、人権行政を信じられないと絶望的な気持ちになる人は多いと思う。

「差別は人を殺す」と言われるがそれは明白なことで、例えば厚生労働省などの統計を見ても在日コリアンの自殺率は高い。彼らは生まれたときからずっと否定的なメッセージを受け取っている。朝鮮人は汚いとか、今は多少よくなったが、「韓国人は嘘つきだ」といった本の広告が電車に並んでいたりする。それで精神的なストレス受けない方がおかしいですよ。

朝鮮人虐殺については日本人の側も、少なくとも殺すのを見ている人や実際に手を染めた人たちもトラウマを抱えたと思う。そうした加害者や、日本人は優しくて残虐なことはしないと信じていて、そのアイデンティティーが崩壊するようなことは否定したいと思う人たちを救うためにも歴史をちゃんと説明した方がいい。

こういう背景があったから、こういう虐殺事件が起きたと説明し、彼らが歴史に向き合えるようにするのも行政の役割だ。もちろん歴史研究者の役割もありますが。

これは今後、東京をどうしていくのかという話にも通じる問題だと思う。外国人との共生やダイバーシティーについて考えていくべき時に、外国人に冷たい、弱者に冷たいメッセージを送り続けている首長でいいのかということです。

20241126issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年11月26日号(11月19日発売)は「超解説 トランプ2.0」特集。電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること。[PLUS]驚きの閣僚リスト/分野別米投資ガイド

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ショルツ独首相、2期目出馬へ ピストリウス国防相が

ワールド

米共和強硬派ゲーツ氏、司法長官の指名辞退 買春疑惑

ビジネス

車載電池のスウェーデン・ノースボルト、米で破産申請

ビジネス

自動車大手、トランプ氏にEV税控除維持と自動運転促
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中