最新記事
投資戦略

バフェットは暴落前に大量の株を売り、市場を恐怖に陥れていた

Warren Buffett's Growing Cash Stockpile Sparks Stock Market Fears

2024年8月6日(火)16時39分
アリア・ショエブ
バークシャー・ハサウェイ年次株主総会のバフェット

バークシャー・ハサウェイの年次株主総会に現れたバフェット(5月3日、ネブラスカ州オマハ) REUTERS/Scott Morgan 

<「リスクが極小で利益が極大」の投資機会をめざす「投資の神様」が早々にアップル株やバンク・オブ・アメリカ株を大量に売却していた意味は>

ウォーレン・バフェット率いる米投資会社バークシャー・ハサウェイは、保有株を大量に売却して手持ちの現金を増やしている。

同社が発表した第2四半期報告書によれば、6月30日現在の現金保有高はおよそ2770億ドル(およそ40兆5700億円)と過去最高に達し、第1四半期末の1890億ドル(およそ29兆円)と比べて大きく増加している。

第2四半期には、保有していたアップル株を大量に売却して7億9000万株から4億株へ50%近く減らしたことが5月3日に判明し、投資家の動揺を招いていた。

「投資の神様」バフェット(93)は世界で最も著名な投資家に数えられ、フォーブス世界長者番付でトップ10にランクインしている富豪だ。

ネブラスカ州オマハに住んでいるため「オマハの賢人」とも呼ばれ、世界の投資家たちが彼の一挙手一投足に注目し、分析している。

米調査会社CFRAリサーチのディレクター、キャシー・シーファートは本誌に対し、「バークシャー・ハサウェイは現金保有高を着々と増やしてきたが、ここ最近でそれを加速させたのはおそらく、社内で保守的な傾向が強まっていることの表れだろう。大型株を巡る最近の同社の動きを見れば明らかだ」と語った。

シーファートが言及したのは、バークシャー・ハサウェイが、アップル株とバンク・オブ・アメリカ株を削減するという決断をしたことだ。バークシャー・ハサウェイは7月中旬、バンク・オブ・アメリカ株およそ3400万株を14億8000万ドル(約2330億円)で売却している。

適正な価格の会社がない?

「株式市場が悪化する局面では、バークシャー・ハサウェイは、短期的・中期的に日和見主義になる」とシーファートは述べている。

シーファートは、バークシャー・ハサウェイが慎重になっているのは市場が変動する可能性があるからで、相場が安定すれば再び投資機会を狙ってくるという。

またバークシャー・ハサウェイは、適正な価格で購入できる事業や個別銘柄が見つからない場合、手元に現金をためたままにしておくこともあると、ニューヨーク・タイムズ紙は指摘する。

バフェットは、5月に開催されたバークシャー・ハサウェイ年次株主総会で、現金保有高についてこう述べている。「ぜひ投資したいと思っている。しかし、リスクがきわめて小さく多額の利益を得られる案件だと判断できない限りは投資しない」

バークシャー・ハサウェイは現在、投資の大部分を5社に集中させている。最大の投資先はいまもアップルで、およそ840億ドル(およそ12兆円)相当の株を保有している。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米国防長官、フィリピン防衛への関与確認 南シナ海に

ワールド

米国務長官、トルコに懸念伝達 イスタンブール市長逮

ビジネス

トヨタ、2月世界販売・生産5.8%増で前年超え 対

ワールド

高速回線向け資金、マスク氏に有利な管理しない=米商
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影された「謎の影」にSNS騒然...気になる正体は?
  • 2
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中国・河南省で見つかった「異常な」埋葬文化
  • 3
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジェールからも追放される中国人
  • 4
    地中海は昔、海ではなかった...広大な塩原を「海」に…
  • 5
    なぜANAは、手荷物カウンターの待ち時間を最大50分か…
  • 6
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 7
    「マンモスの毛」を持つマウスを見よ!絶滅種復活は…
  • 8
    【クイズ】アメリカで「ネズミが大量発生している」…
  • 9
    「完全に破壊した」ウクライナ軍参謀本部、戦闘機で…
  • 10
    不屈のウクライナ、失ったクルスクの代わりにベルゴ…
  • 1
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 2
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 3
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 4
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
  • 5
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 8
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 9
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 10
    大谷登場でざわつく報道陣...山本由伸の会見で大谷翔…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 6
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中