最新記事
バブル

日本発の株価大暴落は実はこれから!? バブル崩壊を見抜くための「3つの軸」

2024年8月30日(金)12時37分
小幡 績(慶応義塾大学大学院教授)*東洋経済オンラインからの転載

しかも、この2つの暴落とも、明確な暴落の理由はなかった。有力者や政府関係者がバブルだと言ったという類の、細いピンでチクッと刺した程度でバブルは破裂したのである。

明確な理由がないのは、今回も同じである。アメリカの景気見通しが悪化したなどといわれているが、大した悪化ではないし、予想されていたことだった。また、日本の暴落は日銀の利上げと日銀総裁の記者会見がきっかけと思われているが、0.15%の利上げであり、記者会見もニュアンスが変化しただけで大騒ぎするものではなかった。

しかし「大した理由でないのに暴落が起きた」ということこそが、事の深刻さを表しているのである。暴落の原因はバブルだったという事実そのものにあり、それ以外になかったのである。だからこそ、暴落が止まる理由はないのである。

バブルが完全に崩壊するまで、反転があればあった分だけ再度下落するのである。だから、私は、暴落は乱高下を繰り返しながら継続すると考える。

【日本株や金融市場全体に深刻な影響の懸念】

第2に、さらに深刻なのは、日本株であり、日本の金融市場全体である。なぜなら、為替という大きな要素があり、為替こそが明らかな、とてつもないバブルであったからである。

円キャリートレードが世界を巻き込んだので、資金の出所として国外もかんでいる。さらに、個人かつ投資初心者を巻き込んでいる。その結果、多種多様、さまざまな買い手主体が錯綜している。有象無象の群集によるバブルである。となると、収拾がつかないのは必至で、バブル崩壊過程はこんがらがりながら長く続くだろう。

そして、最も重要で基本的なことは、中央銀行が作ったバブルであるということである。流動性が中央銀行から直接に供給された。しかも、政府国債を直接買い支えた。その結果、財政もばらまかれた。民間金融機関から国債を吸い上げた。

つまり、国内金融市場の資金を中央銀行と政府が一体となって、バブルにつぎ込み、円安と株高をつくったのである。ここで重要なのは、その罪ではなく、その結果、銀行を巻き込んだバブルと同じことになっているということである。

しかも、今回の銀行は、市中の商業銀行よりも、一国の経済の根幹をなす中央銀行がバブルに巻き込まれているのである。そして、金融政策の変更が混乱を招いた最大の原因だと誤解されている。バブル崩壊のコントロール、軟着陸を実現するための最重要プレーヤーの行動が今後縛られることになり、また信用もされていないのである。

この結果、日本金融市場のバブル崩壊、株式の暴落、通貨の混乱、国債市場の混乱、これらすべてが起こりかねない条件がそろっているといえる。そして、そのバブル崩壊の危機が実体経済、社会全体に波及する要素がそろっているのである。

したがって、私は世界で最も日本市場が危ないと思う。まずは、株式市場。次に為替が急激に円高になったあとに、中央銀行と政府の政策の混乱で円が急落し、国債も暴落する。それが最悪のシナリオであり、このリスクシナリオが実現する可能性はある。

1929年のようにはならないが、普通のバブル崩壊、アジア金融危機で東アジア諸国が経験した危機のようなことになりうる。

※当記事は「東洋経済オンライン」からの転載記事です。元記事はこちら
toyokeizai_logo200.jpg

20250225issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年2月25日号(2月18日発売)は「ウクライナが停戦する日」特集。プーチンとゼレンスキーがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争は本当に終わるのか

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米バークシャー、24年は3年連続最高益 日本の商社

ワールド

トランプ氏、中国による戦略分野への投資を制限 CF

ワールド

ウクライナ資源譲渡、合意近い 援助分回収する=トラ

ビジネス

ECB預金金利、夏までに2%へ引き下げも=仏中銀総
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チームが発表【最新研究】
  • 2
    障がいで歩けない子犬が、補助具で「初めて歩く」映像...嬉しそうな姿に感動する人が続出
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 5
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 6
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 7
    見逃さないで...犬があなたを愛している「11のサイン…
  • 8
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 9
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 10
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 5
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 6
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 7
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 8
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中