日本発の株価大暴落は実はこれから!? バブル崩壊を見抜くための「3つの軸」

2024年8月30日(金)12時37分
小幡 績(慶応義塾大学大学院教授)*東洋経済オンラインからの転載

バブルを総括し、歴史的なバブルと比較するということは、1回の記事では無理なので、まったく議論を尽くせないが、ここで今後、現在のバブル崩壊過程がどうなるか、個人的な見解を述べて、いったん終わることにしよう。続きはどこかで必ずしたい。

【バブルは何度も崩壊を繰り返す】

過去のバブルと比較して、やはりいちばん近いのはドットコムバブルである。これは、ITバブルとAI・半導体バブルだから似ているということではなく、前出のように、銀行が関与していない、株式市場の値付けの問題だけであるという点にある。その結果、株式の価格が暴落しても、実体経済への影響は軽微であり、金融システムが揺らぐようなことはないということである。

では、「大した危機にはならないのでは?」と思われるかもしれないが、それはまったく別問題だ。以下の2つを考える必要がある。

第1に、今後、暴落は続くか。どこまで下がるか。もう調整は終わったのか。

私は続くと考える。理由は、過去何度も述べてきたように、バブルは何度も崩壊を繰り返すのである。そのたびに「調整は終わった」となり、買いが戻ってくる。しかし、バブルの構造は崩れてしまっているから、買いが入れば、それはポジションを整理しきれていない投資家が売りを出すのを呼び込むだけであり、だから、買い支えで株価水準を崩さないようにするバブル崩壊対策は逆効果で、売り逃げたい欲望という火に油を注ぐことになるのである。

1987年のブラックマンデーのときは、10月19日月曜日のたった1日でアメリカのダウ30種平均株価は22.6%も下がった。だが、すでに10月に入ってから下落は始まっていた。そして10月19日の暴落後は乱高下を繰り返したが、12月初旬にもう一度、最安値水準近くまで下がっている。はっきり回復するのは1988年に入ってからである。

また1929年の大暴落のときは、3月に一度暴落があり、銀行から救済資金が注入され、相場はいったん戻す。5月にも暴落があったが、6月から大幅上昇を再開し、最高値を更新している。そして、9月にクラッシュと呼べる暴落がある。このときは「これは健全な調整だ」「絶好の買い場だ」などといわれたりしたのである。

しかし、10月に入ると株価は明確に下がり始め、そして、ついには10月24日ブラックサーズデー、28日ブラックマンデー、29日ブラックチューズデーと、何度も暴落した。しかしその後、翌1930年の4月にかけて回復し、1929年10月の下げの半分以上は戻した。

そこで終わりではなかった。1930年4月から1932年の7月にかけては、長期にわたる大幅下落を続け、暴落が始まった1929年10月から1932年7月までに89%下落した。そして、1929年9月のピークを超えるのは、1954年11月、25年間、なんと「失われた25年」となったのである。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トルコ大統領、プーチン氏に限定停戦案示唆 エネ施設

ワールド

EU、来年7月から少額小包に関税3ユーロ賦課 中国

ビジネス

米クリーブランド連銀総裁、「引き締め的な政策」望む

ビジネス

利下げには追加データ待つべきだった、シカゴ連銀総裁
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 2
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 3
    受け入れ難い和平案、迫られる軍備拡張──ウクライナの選択肢は「一つ」
  • 4
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 5
    【揺らぐ中国、攻めの高市】柯隆氏「台湾騒動は高市…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 8
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 9
    「前を閉めてくれ...」F1観戦モデルの「超密着コーデ…
  • 10
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 5
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 6
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 7
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 8
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 9
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 10
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中