日本発の株価大暴落は実はこれから!? バブル崩壊を見抜くための「3つの軸」

2024年8月30日(金)12時37分
小幡 績(慶応義塾大学大学院教授)*東洋経済オンラインからの転載

1990年代後半に起きたアジア金融危機では、短期資金が欧米から流れ込み、これが犯人扱いされた。だが、アジア各国の国内金融機関やアジアの投資家が中心となった債券市場を経由していたから、資金が引き揚げられたとき、国内の銀行、金融市場も崩壊し、ダメージは極端に大きくなった。為替が絡んでいるから、さらに影響は、消費者、生活者にも波及し、社会にも大きなダメージを与えた。

一方、政策によるバブル、これは間接的には多い。1980年代後半の日本のバブルは、1985年のプラザ合意後の急激なドル安円高を抑えるために、日銀の金融引き締めを遅らせる圧力が加わったと言われている。

日銀はこのときのトラウマがあり、為替にかかわりたくないということがあると個人的には思っている。アメリカのドットコムバブルのときも、1990年代後半から中央銀行であるFEDは金融引き締めを始めたが、それが遅すぎたことが背景にはあるとも言われている。

【バブル崩壊を政策バブルで救ったことによる結末】

しかし、それらと次元も質も異なる、政策によって直接作られたのが2008年のリーマンショック後の一連のバブルだ。量的緩和バブルは日本の発明だったが、これがアメリカにも欧州にも広がった。コロナショックバブルでは、財政出動による現金のばらまきが、アメリカに激しい個人投資家バブルを作り、欧州でも日本でも同様に、株式市場だけでなく消費市場にも広がった。

そして、現在のバブル崩壊は、この行き着いた先である。つまり、リーマンショックによるバブル崩壊の処理を先送りするために、バブル崩壊を政策バブルで救った結末が今なのである。

日本は、その最たるものだ。アメリカも金融や財政を動員したが、金融政策はいったん引き上げた。利下げが遅れたといわれているが、もし利下げを早く行っていれば、現在のバブルはもっと極端なものになっていた可能性がある。

一方、日本がとくにひどいことになったのは、金融緩和を極端に行ったために、円安が極端に進んだことにある。これにより、世界からの投資が集まり、不動産をはじめ資産価格が大きくゆがむことになった。同時に、為替の変動による短期的資金の引き揚げ(いわゆる円キャリー取引の巻き戻し)の影響が、1990年代後半のアジアの新興国のように進み、為替にすべてが振り回される結果になった。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米ホワイトハウス付近で銃撃、州兵2人重体 トランプ

ワールド

ニュージーランド経済、下半期は拡大 需要安定化=中

ビジネス

日経平均は続伸で寄り付く、5万円回復 ハイテク株し

ビジネス

英、高額所得者の国民保険料優遇措置を大幅削減へ 雇
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 4
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 5
    7歳の娘の「スマホの検索履歴」で見つかった「衝撃の…
  • 6
    がん患者の歯のX線画像に映った「真っ黒な空洞」...…
  • 7
    ミッキーマウスの著作権は切れている...それでも企業…
  • 8
    あなたは何歳?...医師が警告する「感情の老化」、簡…
  • 9
    ウクライナ降伏にも等しい「28項目の和平案」の裏に…
  • 10
    【クイズ】世界で1番「がん」になる人の割合が高い国…
  • 1
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 5
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 6
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 7
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 8
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 9
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 10
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中