日本発の株価大暴落は実はこれから!? バブル崩壊を見抜くための「3つの軸」

2024年8月30日(金)12時37分
小幡 績(慶応義塾大学大学院教授)*東洋経済オンラインからの転載

今回の日本株の暴落で怖いのは、これまで株式投資をしてこなかった個人が多数巻き込まれていることである。アメリカでは、いわゆるコロナ給付金で初めて株を買った「ロビンフッダー」が有名だが、さらに被害が大きいのはNISA(少額投資非課税制度)で株式投資を始めた日本の個人だ。

とくに今年から制度が拡充された新NISAで買い始めた人々は、買って1年も経たないうちに株価が大幅下落に見舞われたのだから、「今後、株なんて買わない」「長期間塩漬けにするしかない」と考える人が、かなりの数にのぼりそうだ。これは、まさにNTT民営化に伴う1987年以降の6度にわたる政府保有株の売り出しに応募して、高値づかみをした個人と同様だ。長期的に、投資に対してゆがんだ行動をとるようになるだろう。

一方、機関投資家と呼ばれる運用者たちは損失を被っているが、それはいつものことで、大きな事後的な影響はないだろう。実体経済への影響としては、今回は少ないと思われる。

例えば、1980年代後半の日本のバブルでは、多くの企業が「財テク」で不動産や株式などに投資していたから、その後の企業行動に大きな制約がかかり、バブル崩壊から立ち直るのに時間がかかった。

オリンパスの2011年にスキャンダルとなった粉飾決算に関連する事件も、ガバナンス(企業統治)の問題というよりは、結局は、1985年以降の円高対策としての財テクの失敗を長期的に償却するための行動であるから、「財テクの失敗」が実は本質であった。

ただし、今回のバブル崩壊では、日本企業はコロナ後急激にM&Aを活発化させたところであるから、財務面では一部マイナスの影響は残るだろう。

【1929年の大暴落時はアメリカへ大量の海外資金が流入】

(3)流動性がどこから来ているか

資金はどこから来ているのか。国内か海外か。政策的に供給されているか。銀行が提供していたり、銀行を迂回した融資が提供されていたり、ということが多いが、自己資金の場合もある。あるいは、中央銀行や金融当局が引き締め、監視を行い、流動性を吸い上げたり、資金の流れを止めたりする。

1980年代後半の日本のバブルの場合は、日本銀行の利上げは効かず、大蔵省(当時)の不動産業界への融資の総量規制が効いたことによって不動産バブルは崩壊した。このときはノンバンクから迂回融資されていたため、総量規制は直接は効かなかったが、「不動産バブルは終わりだ」いう合図にはなり、崩壊した。21世紀の欧米、中国ではシャドーバンキングにより流動性が供給されている(中国は中国特有の手法で)。

1929年の大暴落のときは、アメリカへ海外から大量に資金が流れ込んでいた。主に英国やドイツからで、フランスやそのほかの国も含めた欧州、そして日本からもあった。したがって、アメリカの大暴落は世界中に波及したのである。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

北朝鮮、4日に極超音速ミサイル発射実験 米をけん制

ビジネス

午前の日経平均は大幅反発、海外・個人マネー流入の思

ビジネス

見通し実現なら経済・物価の改善に応じ引き続き利上げ

ビジネス

米債券市場、26年はリターン縮小か 利下げペース鈍
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    眠る筋力を覚醒させる技術「ブレーシング」とは?...強さを解放する鍵は「緊張」にあった
  • 2
    アメリカ、中国に台湾圧力停止を求める
  • 3
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙」は抑止かそれとも無能?
  • 4
    2026年の節目に問う 「めぐみの母がうらやましい」── …
  • 5
    野菜売り場は「必ず入り口付近」のスーパーマーケッ…
  • 6
    ベネズエラ攻撃、独裁者拘束、同国を「運営」表明...…
  • 7
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 8
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 9
    「対テロ」を掲げて「政権転覆」へ?――トランプ介入…
  • 10
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 1
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめる「腸を守る」3つの習慣とは?
  • 2
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチン、その先は袋小路か
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙…
  • 5
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 6
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 7
    眠る筋力を覚醒させる技術「ブレーシング」とは?...…
  • 8
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 9
    「すでに気に入っている」...ジョージアの大臣が来日…
  • 10
    「サイエンス少年ではなかった」 テニス漬けの学生…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 10
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中