最新記事
株の基礎知識

日経平均の最高値更新から見える、日本株市場の特殊さと「物足りない」と言わざるを得ない理由

2024年3月21日(木)18時35分
朋川雅紀 ※かぶまどより転載
東京株式市場 日本株

3月21日には終値も最高値を更新、4万0815円となった REUTERS

<アメリカの株式市場を主戦場としてきた者にとっては「随分時間がかかった」という感想。「持ってはいけない資産」だった日本株は、未だ「持たなければならない資産」ではない>

時間のかかった最高値更新

2月22日、日経平均株価が史上最高値を更新しました。日経平均株価は、1989年12月に前回の史上最高値をつけたわけですから、約34年ぶりの最高値更新ということになります。

(編集部注:3月に入り、史上最高値をさらに更新。4万円も突破した)

もし私が日本株の運用担当者を長くやっていたならば、現在の局面を、おそらくは特別な感情で受け止めていたことでしょう。

しかしながら、アメリカの株式市場を長期にわたって主戦場としてきた私にとっては、日経平均株価が最高値を更新しても、「随分時間がかかった」という感想が真っ先に来てしまいます。

アメリカ市場は、数年ごとに最高値を更新し続けています。株価というのは、長期的には業績に連動するものですから、経済が成長して、それに呼応して企業の業績が改善すれば、自ずと株価は上昇するわけです。

その点を鑑みれば、34年も最高値が更新されなかった日本株市場というのは、極めて特殊なマーケットであると言わざるを得ません。

ここで、なぜ日本株市場が長期で低迷したのかを整理し、現在の状況は過去と何が違うのかを考えてみたいと思います。

日本株市場、長期低迷の背景

まず、日本株市場が長期にわたって低迷した背景について整理します。

■経済の失速

1990年代初めに日本はバブル経済の崩壊を経験し、その後、長期間にわたって経済の停滞が続きました。企業の業績が低迷したことで、株式市場も低迷しました。

■デフレ

日本は長期間にわたってデフレ(物価の下落)に苦しみました。デフレは企業の収益を圧迫し、投資家の信頼を損ないました。

■少子高齢化

日本の人口減少と高齢化は、経済成長に対する重石となっています。少子高齢化により労働人口が減少し、経済活動に悪影響を及ぼしています。

■構造改革の遅れ

日本は構造改革を進めることが遅れていました。規制緩和や労働市場の改革などが必要でしたが、実施が遅れていたため、経済の活性化が妨げられてしまいました。

(参考記事)バブル期を超えた相場をどう捉えるべきか。不安の声も聞こえてくるが...

いま日本株市場を押し上げているもの

続いて、現在の日本株市場を押し上げている要因について考えてみましょう。

■景気回復と企業業績の改善

2023年には世界的な景気回復が進み、日本企業の業績も改善しました。景気の持ち直しに伴い、企業の収益が増加し、株価に対する期待が高まりました。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

日産、武漢工場の生産25年度中にも終了 中国事業の

ビジネス

豊田織機の非公開化報道、トヨタ「一部出資含め様々な

ビジネス

中国への融資終了に具体的措置を、米財務長官がアジア

ビジネス

ベッセント長官、日韓との生産的な貿易協議を歓迎 米
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 7
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 8
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 9
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中