ジブリ作品らしさも...アカデミー賞のアニメ映画『Flow』はネコが主人公の「ネコっぽい映画」
The Purr-fect Oscar Story
対照的に『Flow』のほうには「情緒的な絆を結びたければ多少なりとも観客側の努力が必要だ」という暗黙の了解が存在する。
灰色のネコや黄色いラブラドール、キツネザルにカピバラ、ヘビクイワシといったキャラクターは多少は擬人化されているが、人の言葉は話さない(声はカピバラを除いて、それぞれの動物の本物の鳴き声だ)。
主人公のネコに名前はない(周囲に名前を付けてくれる人間はいない)。痩せっぽちだが意志は強く、大洪水に見舞われた世界を何とか生き延びようとしている。
初めのほうの場面で、ネコは川の近くで餌を探す騒々しいイヌの群れを見かける。魚を捕っていたはずが、いつしか遊ぶことに夢中になってしまったイヌたちをよそに、捕まえられた魚が1尾、ネコのほうに跳ねてくる。
恐怖より空腹が勝り、ネコは恐る恐る魚にかぶりつくが、振り返ったラブラドールにその様子を目撃されてしまう。襲われる、とネコは身を固くする。だがラブラドールは舌をだらりと垂らし、ぼんやりネコを見つめるだけ。どう反応すべきか、誰かが教えてくれるのを待っているのだ。
観客の歩み寄りは要るが
このイヌのモデルはギンツ・ジルバロディス(Gints Zilbalodis)監督の飼い犬らしい。
一方でネコは、監督が高校生時代に制作した短編アニメ映画『Aqua』の主人公でもある。
『Flow』はそれよりもはるかに洗練された作品に仕上がってはいるが、低予算映画ならでは(正確に言えば400万ドルもかかっていない)の魅力もある。