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ジブリ作品らしさも...アカデミー賞のアニメ映画『Flow』はネコが主人公の「ネコっぽい映画」

The Purr-fect Oscar Story

2025年3月14日(金)15時20分
サム・アダムズ(スレート誌映画担当)

映画『野生の島のロズ』のロズとキラリ

『野生の島のロズ』 ©2024 DREAMWORKS ANIMATION LLC.

対照的に『Flow』のほうには「情緒的な絆を結びたければ多少なりとも観客側の努力が必要だ」という暗黙の了解が存在する。

灰色のネコや黄色いラブラドール、キツネザルにカピバラ、ヘビクイワシといったキャラクターは多少は擬人化されているが、人の言葉は話さない(声はカピバラを除いて、それぞれの動物の本物の鳴き声だ)。


主人公のネコに名前はない(周囲に名前を付けてくれる人間はいない)。痩せっぽちだが意志は強く、大洪水に見舞われた世界を何とか生き延びようとしている。

初めのほうの場面で、ネコは川の近くで餌を探す騒々しいイヌの群れを見かける。魚を捕っていたはずが、いつしか遊ぶことに夢中になってしまったイヌたちをよそに、捕まえられた魚が1尾、ネコのほうに跳ねてくる。

恐怖より空腹が勝り、ネコは恐る恐る魚にかぶりつくが、振り返ったラブラドールにその様子を目撃されてしまう。襲われる、とネコは身を固くする。だがラブラドールは舌をだらりと垂らし、ぼんやりネコを見つめるだけ。どう反応すべきか、誰かが教えてくれるのを待っているのだ。

観客の歩み寄りは要るが

このイヌのモデルはギンツ・ジルバロディス(Gints Zilbalodis)監督の飼い犬らしい。

アカデミー賞にノミネートされた瞬間のギンツ・ジルバロディス監督と飼い犬

一方でネコは、監督が高校生時代に制作した短編アニメ映画『Aqua』の主人公でもある。

ギンツ・ジルバロディス監督が高校生時代に制作した短編アニメ映画『Aqua』

『Flow』はそれよりもはるかに洗練された作品に仕上がってはいるが、低予算映画ならでは(正確に言えば400万ドルもかかっていない)の魅力もある。

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