オスカー5冠の快挙!『ANORA アノーラ』のショーン・ベイカー監督が語った「ユーモアとセックスと語られていない物語」
Z世代の若者がセックスに関心を持たなくなったことが、この映画を作った理由でもある......というベイカーの発言があったというが、それについてはこう否定する。
「それは僕が言い始めたというより、世論調査についての話の中で出てきた言葉だ。『Z世代はもはや物語の中でセックスを見たいと思っていない』という調査結果があって、それについて話す中で『だから、この映画を作った』と言ったんだ。調査結果が出たのも、映画が完成した後だったかもしれない。
そもそも、その調査が正しいのかも分からない。でも本当なら悲しいことだと思った。だってセックスは人生の大きな一部で、とても重要なものだからね。正直に言うと、その調査結果には少しショックを受けた。
僕の映画はセックスワークをテーマにしてきたので、物語にセックスが含まれるのは当然のこと。でも、セックスワークとは関係がないが、それでもセックスやエロティシズムのある映画を作ったときに観客がどう反応するかは興味があって、それはぜひ挑戦してみたい。いつかエロティックな映画にも取り組んでみたい」
アニー役のマイキー・マディソンは、アカデミー賞主演女優賞に初ノミネートで初受賞した。彼女の抜擢については、とても簡単なプロセスだったという。
「これまでで一番簡単なキャスティングだった。『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(19年)でのマイキーの演技がすごく印象的で、まだ『アノーラ』のアイデアすらなかった頃だが、「いつか一緒に仕事をしたい俳優」として彼女のことを頭の片隅に残していた。
その後、プロデューサーでもある妻のサマンサと一緒に『スクリーム』(22年)を公開初週に見に行き、彼女の演技に「もう他を探す必要はない」と確信した。彼女がアニーだ、と。映画館を出た瞬間、彼女のエージェントに連絡を入れたんだ。
マイキーは撮影の1カ月以上前からブルックリンのブライトンビーチ(物語の主要な舞台で、ロシア系移民が多い)に住んでいて、私たちはその環境にどっぷりと浸かることができた。
リハーサルの時間もしっかり取れて、きちんと話し合うこともできた。だから、彼女だけでなくキャスト全員と監督の関係が、より実りのあるものになったと思う」