最新記事
軍艦島

ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の超過密空間のリアル「島の社交場」として重宝された場所は?

2025年1月15日(水)16時43分
風来堂 (編集プロダクション)*PRESIDENT Onlineからの転載

住居の格差はあったが「一島一家」と言われるほどアットホーム

身分によって住居に格差があったのは、戦前の「社員は一切会社側の管理の下にあって、部屋の決定も鉱夫たちには自由に選択できず、労務係が平常の仕事の成績に従ってよい部屋をあたえる」という三菱独自の規則があったからであった。

家族の人数によって妥当な部屋を配分されるわけではなく、6畳1間に9人で暮らしていた家族もいたという。

1947(昭和22)年に「社宅入舎割当点数制度(住み替えの点数制度)」が実施され、勤務成績や勤続年数、家族構成に応じて希望の部屋が選べるようになった。

鉱員の中でも長く勤めている者はグレードの高い部屋に移ることができたという。そのため鉱員はより太陽の当たる部屋を求めて引っ越し、同じ部屋に住み続けることはなかった。

基本的には、職員と鉱員の住宅は明確に区別されていたが、職員社宅が足りない頃には、職員が鉱員社宅に住むこともあった。


なお、狭い島内であり同じ職場である者も多く、さらに共同浴場などを利用していたからか住民同士の絆は深かった。それは「一島一家」と言われるほどアットホームだったという。外出や就寝する時でも、よほどのことがない限り鍵をかけなかったという住民もいたが、それでも泥棒に入られたという話はほとんどなかったそうだ。

国内有数の家電の充実ぶりで水道光熱費はわずか10円

島で暮らす住民の水道光熱費は1959(昭和34)年で、すべてあわせて10円だった。家賃は無料で、昭和30年代後半の6畳1間、共同トイレ風呂なしのアパートの家賃が、国内平均で3000円程度だったことと比べると、その待遇の良さがよくわかる。

島内のアパートは部屋ごとに備え付けのかまどがあり、台所での煮炊きは薪を使っていたが、やがてプロパンガスや電気が使われるようになった。プロパンガスは2個まで無料配布され、2個以上は有料であったが、2個以上必要なことはほとんどなかったという。

また、島内ではいち早く電化が進み、充実した電化生活を送っていた。当時庶民の憧れの的で「三種の神器」といわれていた白黒テレビ、電気洗濯機、電気冷蔵庫の全国普及率はそれぞれ7.8%、20.2%、2.8%だったのに対し、島内での保有率はほぼ100%というから生活の豊かさがうかがえる。

しかし、海底水道の完成と、各戸に洗濯機が普及していったことで、各階にあった共同の洗濯機は物置と化してしまった。

また、1972(昭和47)年当時、新卒の月給は5〜6万円だったのに対し、軍艦島では月約20万円受け取っており、極めて恵まれた生活をしていたと想像ができる。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

IT大手決算や雇用統計などに注目=今週の米株式市場

ワールド

バンクーバーで祭りの群衆に車突っ込む、複数の死傷者

ワールド

イラン、米国との核協議継続へ 外相「極めて慎重」

ワールド

プーチン氏、ウクライナと前提条件なしで交渉の用意 
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口の中」を公開した女性、命を救ったものとは?
  • 4
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 5
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 6
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 7
    足の爪に発見した「異変」、実は「癌」だった...怪我…
  • 8
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 9
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 10
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 6
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 7
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 10
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中