村上春樹、「ぼく」の自分探しの旅は終着点に到達した...ここまで来るのに40年以上の歳月を要した
A Return to Wonderland
『街とその不確かな壁』で描かれる街は、村上のイマジネーションそのもののようだ。そこは時間が止まった領域で、その図書館には、何度も立ち返れる古い夢が保管されている。
『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』では、壁に囲まれた街は科学者によってつくられるが、『街とその不確かな壁』の街は、恋に落ちた少年と少女が、現実を拒絶してこしらえた世界だ。
主人公にはそれが、これまでの村上作品のどの登場人物よりも、はっきりと見える。それは、村上自身の理解が深まったことを示しているようでもある。
ここまで来るのに40年以上の歳月を要したことを考えると、村上がこの目的地にたどり着いたことを、一段と歓迎せずにはいられない。
『The City and Its Uncertain Walls: A Novel』
Haruki Murakami[著]Philip Gabriel[訳]
Knopf[刊]
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『街とその不確かな壁』
村上春樹[著]
新潮社[刊]
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