「人種の壁」を超えたヒーローたち...大谷とジャッジが示した「多様性の理想」
BRIGHT LIGHTS AND FLICKERING TORCHES
スタジアムに入ると、ボストンの人種意識を個人的に調査するため、黒人の数をよく数えた。2万〜3万5000人の観衆の中で、私が見つけることができたのは、たいてい79人とか86人、71人という具合だった。父の時代のアメリカでも、私の育った35年後のアメリカでも、「誰もがプレーできる」わけではなかった。
しかし、アメリカは当時とは驚くほど変わり、今も変化し続けている。私が生まれた1956年当時、人口の89%は白人だった。私が高校生の頃、好きだった黒人の女の子をデートに誘う勇気はなかった。そんなことをしたら、当時の人種差別的な言い方をすれば「ニガー・ラバー」だった私は、毎日殴り合いのけんかをしなければならなかっただろう。今日では憎悪に満ちたその言葉を使う人はいない。それから20年後、私は最愛の女性と結婚した。彼女は中国人だ。今では「異人種間の」関係は当たり前になっている。今後10年ほどで、アメリカは少数派(マイノリティー)が多数派(マジョリティー)を構成する「マイノリティー・マジョリティー」の社会になり、白人は人口の半分以下になるだろう。
大谷と異人種のバックグラウンドを持つジャッジは、「国民的娯楽」である野球のスーパーヒーローとして全米で熱狂的に受け入れられている。ファンは2人を、チームをワールドシリーズに導いた史上最高の選手であり、ロールモデルとして見ている。「日本人」の大谷、「混血の」ジャッジとして見てはいない。