「伝説のデカ」が復活! 30年ぶりの新作『ビバリーヒルズ・コップ』が取り入れた「革命的な視点」とは?
Axel Foley 30 Years Later
刑事を引退したビリーから連絡を受けたアクセルは、疎遠になっている娘のジェーン(テイラー・ペイジ)に危険が迫っていると聞き、再びカリフォルニアへ向かう。
弁護士のジェーンは、刑事殺害犯として告発された男性の無実を信じ、容疑を晴らそうとしている。同じ考えのビリーは、ケイド・グラント警部(ケビン・ベーコン)率いる麻薬対策チームの腐敗を疑ったことから、かつての相棒で警察署長に昇進したタガートと仲たがいしている。
「いいワル」はいるのか
元刑事のウィル・ビールが脚本を手がけた本作は、複雑でありながら単純だ。さまざまな展開があるものの、ジェーンとビリーが正しいことは疑う余地がない。悪役のベーコンは登場した瞬間から、笑えるくらい怪しい。
捜査のためなら嘘をついてもいいと主張していたアクセルは今回、どんな嘘も辞さない刑事が持つ権力を思い知ることになる。汚れ仕事に雇う殺し屋のことを尋ねられたグラントは薄笑いを浮かべ、アクセル自身の独創的な捜査手法に触れる。「おまえだって、純粋無垢ではないだろう」
刑事殺害事件を解決しなければならず、必要な証拠を確保するためなら「何でもする」と、グラントは言ってのける。賢明な堅物刑事ボビー・アボット(ジョゼフ・ゴードン・レビット)の車内に麻薬を仕込むことも、ジェーンの誘拐も、ビリーを拷問することも......。
アクセルは警察の不正という概念に無知なわけではない。ただ、彼に言わせれば、悪徳刑事と「いいワル」の刑事は違う。後者の場合、ルールを無視することがあっても、それは正しい目的のためだ。
この微妙な区別はあまりに曖昧で、昔ながらのアクションコメディー映画が求める要素の前では影が薄くなる。
アクセルと新たな相棒2人、ビリーとボビーが警察とカーチェイスを繰り広げる頃には、懐かしのムードになる。「追われる側になったのは初めてだ」。そうつぶやくボビーに、ビリーは「楽しむには慣れが必要だ」と笑う。
アクセルとグラントはどこが違うのか。その差を見極めようとする人が、今の時代に大勢いるとは思えない。30年の年月は長い。その間に現実世界では、初期3作でアクセルの上司を演じた本物のデトロイト市警警部が、不法行為で告発される事件も起きた。
『アクセル・フォーリー』がヒット作になるのは間違いない。視聴者の心をつかむのは、本作のノスタルジアだ。ここには、大物スターの魅力だけで映画が成立した時代への郷愁、80年代映画の派手な銃撃戦への郷愁が満ちている。
何よりも懐かしんでいるのは、「いいワル」の刑事という存在を信じることができた過去だ。今でも、そう信じられるかどうかは疑問だが......。