最新記事
ハリウッド

「ハリウッドに未来はあるか?」映画館の収益が落ち、AIの台頭や多様性に頭を悩ませる...映画の聖地の将来予測

What’s Ahead for Hollywood?

2024年7月12日(金)17時27分
ソフィー・ロイド(ポップカルチャー&エンタメ担当)

昨年行われた脚本家組合と俳優組合のストでも、動画配信サービスは主要な争点の1つだった。動画配信の台頭によって俳優や脚本家に対する収益の分配に混乱が生じていたからだ。

長かったストの後に新たな労使協定が結ばれたが、結果としてコストが上がったため、動画配信を手がける企業は以前よりもプロジェクトの選択に慎重になった。これは採用される映画やドラマの本数が減り、配信が始まっても視聴回数が伸びなければすぐに打ち切られるリスクが高まったことを意味する。


脚本家・俳優のニール・チェイスによれば「今後は巨費を投じた大型作品や人気作のリメークものよりも、オリジナルのコンテンツに力を入れ、確実にコアの観客をつかめる作品が重視される」という。

いい例が昨年秋に公開された『ゴジラ-1.0』だ。1200万ドルに満たない予算で製作されたのに、全世界で興行収入1億1500万ドル超の大ヒット作となった。

「あの作品はゴジラ伝説をユニークな視点で捉え直し、しっかりした脚本と共感できるキャラクター、素晴らしいアクションで勝負した」と、チェイスは言う。「ゴジラのファンが求めるものを残さず提供していた。ぜひハリウッドもそこを学んでほしい」

米国版『ゴジラ-1.0』予告編 GODZILLA OFFICIAL by TOHO

映画館は生き残れるか

その昔、映画の黄金時代には話題の新作を見られる唯一の場所が映画館だった。だが新型コロナウイルスの感染爆発で、状況は一変した。

ロックダウンの影響で映画館は休業を余儀なくされ、20年には北米の映画館の総興行収入が23億ドルにまで激減した(前年実績は114億ドルだった)。不要不急の外出を禁じられた人たちは家から出ず、配信サービスで映画を見て満足するようになった。

あれから4年。今や映画が劇場公開の直後にストリーミング配信されるのは常識となり、劇場公開だけの期間はどんどん短くなっている。

だがフォートは、映画館がかつての栄光を取り戻すことは可能だと信じている。

映画館に客を呼び戻すには何が必要か。まずは施設内のサービス向上、よそでは見られないコンテンツの確保、そして家庭では得られない鑑賞体験の提供が重要だとフォートは言う。

「コロナ以前に戻るのは無理でも、映画館での鑑賞体験に価値を感じるファンは今も確実にいる」からだ。

そのとおりかもしれない。北米における映画館の興行収入は昨年、90億ドルを上回った。コロナ以前の水準まで、あと一息だ。

ニューズウィーク日本版 英語で学ぶ国際ニュース超入門
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年5月6日/13日号(4月30日発売)は「英語で学ぶ 国際ニュース超入門」特集。トランプ2.0/関税大戦争/ウクライナ和平/中国・台湾有事/北朝鮮/韓国新大統領……etc.

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米GDP、第1四半期速報値は0.3%減 関税前の駆

ワールド

米ADP民間雇用、4月6.2万人増に鈍化 予想下回

ワールド

中国経済、国際環境の変化への適応が必要=習主席

ワールド

独メルツ政権5月発足へ、社民党が連立承認 財務相に
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 4
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 5
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 6
    中居正広事件は「ポジティブ」な空気が生んだ...誰も…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 9
    トランプの中国叩きは必ず行き詰まる...中国が握る半…
  • 10
    【クイズ】米俳優が激白した、バットマンを演じる上…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 10
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中