「ハリウッドに未来はあるか?」映画館の収益が落ち、AIの台頭や多様性に頭を悩ませる...映画の聖地の将来予測
What’s Ahead for Hollywood?
真っ先にAIが進出しそうなのが脚本の分野だ。フォートによれば、観客・視聴者の好みに合わせた脚本を量産するにはチャットGPTのような技術が役に立つ。
撮影や照明などの現場でもAIが人間のライバルになり得る。ただしAIが撮影スタッフを駆逐するのか、補助的な役割にとどまるのかは不透明で、まだ議論の余地がある。
フォートのみるところ、アニメや視覚効果の現場でもAIの出番が増えるのは確実だ。従来のような手仕事は減るだろうが、AIを駆使して質の高いイメージを生み出せる人材への需要は増す。
見通しが暗いのは俳優だ。「ディープフェイク」と呼ばれる映像合成技術を使えば、演技の「自動化」は簡単だとフォートは言う。実際、昨年の脚本家組合と俳優組合のストでもAIへの対応は大きな争点になった。
だが、いくらディープフェイクの技術が進化しても、熟達の俳優を駆逐するのは不可能に近いだろう。「感情のこもった繊細な演技には役者の才能が不可欠。その点に変わりはない」と、フォートは言う。「結果としてAIに食われてしまう仕事もあるだろうが、AIのおかげで生まれる新たな仕事もあるはずだ」
作品の多様化はもっと進むか
動画配信サービスのトゥビと市場調査会社ハリスが合同で実施した調査によれば、ミレニアル世代(28~43歳)とZ世代(12~27歳)では「作品の内容や登場人物にもっと多様性が欲しい」という回答が全体の4分の3に達した。独立プロの活動や、低予算でも意欲的な映画・ドラマに期待したいという回答も7割を超えていた。
「大手スタジオや大企業の資金に頼ってはいられないと考えるクリエーターが増えている」と語るのは「スターフューリー」の黒人女性ヌビア・デュバル・ウィルソン。「人種や性的指向のため業界の主流から排除されてきた人たちが自力で作品を製作し、配給も手がける。そんなケースが今後はもっと増えると思う」
動画配信サービスの独り勝ちは今後も続くか
種類の豊富さや利便性の高さから、動画配信サービスは今後も優位を維持すると思われる。だが前出のフォートによれば、伝統的メディアへの回帰現象にも留意すべきだ。現に音楽の世界では、アナログレコードの人気が復活している。
同様に映像の世界でも「DVDやブルーレイなどが再び注目を集め、新旧の技術を融合させた新たな視聴体験が生まれる可能性がある」という。