最新記事
ドラマ

偉大すぎた「スター・ウォーズ」の看板...新ドラマ『アコライト』を失速させてしまった「伝説」の呪縛

The Force Is Not With It

2024年6月20日(木)18時48分
サム・アダムズ(スレート誌映画担当)
ドラマ「スター・ウォーズ:アコライト」

オーシャとメイの2役を演じるステンバーグ ©2024 LUCASFILM LTD. & TM. ALL RIGHTS RESERVED.

<スター・ウォーズ帝国の宿命とディズニーの経営戦略に、最新のスピンオフ作品『アコライト』もからめ捕られてしまった>

米フロリダ州のディズニーワールドにあった「スター・ウォーズ」のテーマホテルをご記憶だろうか。2022年の春にオープンしたが、わずか18カ月で実に2億5000万ドルの赤字を出してつぶれてしまった。

なぜか。その答えを人気ユーチューバーのジェニー・ニコルソンが4時間6分の長尺動画で解説している(再生回数は約800万回)。2泊3日でスター・ウォーズの世界に「没入」できるという触れ込みのホテルに、ジェニーは1泊1600ドル以上も払って泊まってみた。そして今のディズニーは「ブランド品の価格はどんどん上げ、提供する価値はどんどん減らす」傾向にあるが、このホテルはその典型だという結論に達した。

6月5日からディズニープラスで配信が始まったドラマ『スター・ウォーズ:アコライト』にも、残念ながら同じ傾向が見られる。

レスリー・ヘッドランドが脚本・制作総指揮を務める全8話のシリーズ。最初のうちこそ壮大な物語を予感させるが、中盤に差しかかる頃(批評用に筆者らが見せてもらったのは第4話まで)には力尽きてしまう。本気でやりすぎると、既にブランド化している「スター・ウォーズ」の世界を壊すことになりかねないからだ。

『アコライト』は帝国誕生100年前の世界を舞台に、かつてジェダイの戦士になるべく修行を積んでいたが現在は宇宙船の整備士として働いている女性オーシャ(アマンドラ・ステンバーグ)を主人公に据えている。

最初のシーンで、オーシャは淡々と雑用をこなし、仕事仲間と気楽なおしゃべりを楽しんでいる。だが私たちは、そこで「えっ?」と思ってしまう。タイトルが出る前に流れた衝撃の映像で、彼女は1人のジェダイ・マスター(キャリー・アン・モス)と死闘を繰り広げていたからだ。

帝国成立100年前のジェダイは悪者だったのか

ジェダイ・マスターの殺害を受け、ヨード(チャーリー・バーネット)を含むジェダイの面々が犯人捜しに来て、目撃証言からオーシャを尋問するのだが、どう見ても彼女が容疑者とは思えない。では真犯人は誰なのか?

冒頭に現れた驚異の女殺し屋はオーシャではなく、別の誰かの幻影だったのか。私たちは妖術にかかって、殺し屋の正体を見誤ったのか?

実を言うと、この謎の答えは単純明快で、殺し屋の女とオーシャはうり二つの双子だった。だが、それはそれで「スター・ウォーズ」のシリーズが実は低予算の冒険ものとして始まったという事実に脚本家のヘッドランドが忠実だったことの証しとも言える。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

日経平均2カ月ぶり4万円、日米ハト派織り込みが押し

ワールド

EU、防衛費の共同調達が優先課題=次期議長国ポーラ

ワールド

豪11月失業率は3.9%、予想外の低下で8カ月ぶり

ワールド

北朝鮮メディア、韓国大統領に「国民の怒り高まる」 
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:韓国 戒厳令の夜
特集:韓国 戒厳令の夜
2024年12月17日号(12/10発売)

世界を驚かせた「暮令朝改」クーデター。尹錫悦大統領は何を間違えたのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ロシア兵「そそくさとシリア脱出」...ロシアのプレゼンス維持はもはや困難か?
  • 2
    半年で約486万人の旅人「遊女の数は1000人」にも達した江戸の吉原・京の島原と並ぶ歓楽街はどこにあった?
  • 3
    男性ホルモンにいいのはやはり脂の乗った肉?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    「炭水化物の制限」は健康に問題ないですか?...和田…
  • 5
    ミサイル落下、大爆発の衝撃シーン...ロシアの自走式…
  • 6
    ノーベル文学賞受賞ハン・ガン「死者が生きている人を…
  • 7
    韓国大統領の暴走を止めたのは、「エリート」たちの…
  • 8
    「男性ホルモンが高いと性欲が強い」説は誤り? 最新…
  • 9
    「糖尿病の人はアルツハイマー病になりやすい」は嘘…
  • 10
    統合失調症の姉と、姉を自宅に閉じ込めた両親の20年…
  • 1
    ロシア兵「そそくさとシリア脱出」...ロシアのプレゼンス維持はもはや困難か?
  • 2
    「炭水化物の制限」は健康に問題ないですか?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    2年半の捕虜生活を終えたウクライナ兵を待っていた、妻の「思いがけない反応」...一体何があったのか
  • 4
    半年で約486万人の旅人「遊女の数は1000人」にも達し…
  • 5
    国防に尽くした先に...「54歳で定年、退職後も正規社…
  • 6
    朝晩にロシア国歌を斉唱、残りの時間は「拷問」だっ…
  • 7
    「男性ホルモンが高いと性欲が強い」説は誤り? 最新…
  • 8
    男性ホルモンにいいのはやはり脂の乗った肉?...和田…
  • 9
    人が滞在するのは3時間が限界...危険すぎる「放射能…
  • 10
    ミサイル落下、大爆発の衝撃シーン...ロシアの自走式…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    ロシア兵「そそくさとシリア脱出」...ロシアのプレゼ…
  • 9
    「炭水化物の制限」は健康に問題ないですか?...和田…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中