「SDGs全てに貢献できる唯一の産業」観光が21世紀のグローバルフォースと言われる理由

(写真はイメージです) TORWAISTUDIO-Shutterstock
<途上国への支援が日本のオーバーツーリズム解決のヒントに? 世界の観光開発事情に詳しい専門家をゲストに迎え、タレントで大学生の世良マリカさんと一緒に「観光産業のこれから」について考える>
現在、世界では気候変動や食料危機など、さまざまな問題が起きています。そのような問題の現状や解決策について、「世界をもっとよく知りたい!」と意欲を持つタレントで大学生の世良マリカさんと一緒に、各界の専門家をゲストに招いて考えます。第3回のテーマは「世界の観光開発」。北海道大学観光学高等研究センター教授・西山徳明さん、長年、JICAで観光開発に携わってきたタンザニア事務所の浦野義人次長にお話を聞きました。
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2021年、日本が世界の観光競争力ランキング1位に
世良マリカさん(以下、世良) 日本は観光競争力ランキングといわれる世界経済フォーラム(WEF)の「2021年旅行・観光開発指数(Travel and Tourism Development Index2021)」で 1位になりましたが、なぜ1位になれたのでしょうか。
JICA タンザニア事務所・浦野義人次長(以下、浦野) 観光競争力のランキングは約100もの項目に基づきランキング付けされますので、バランスの取れた観光開発が重要になります。日本は島国ですので、ヨーロッパやアフリカのように大陸で国境が隣接していません。移動が大変なので、島国の観光というものは、基本的に国内旅行が盛んにおこなわれることになります。ただ、その中で観光資源は当然限られています。1、2回同じところに行くと飽きてしまうので、新たな観光地を開発していかなければならないわけです。そのため、日本は隅から隅まで観光資源が観光地化されています。また、何もないところから新たな観光資源を作ることに長けていると思います。そういった点も含めて、バランスの取れた観光開発を推進している国として、日本が1位に選ばれたのではないかと思います。
北海道大学教授・西山徳明さん(以下、西山) 豊かな自然や文化資源とともに安心・安全、衛生、交通インフラなども評価されています。そして、残念ながら価格競争力ですね。「円安で過ごしやすい」といった点も含め、総合的に評価されています。
浦野 また、このランキングは「現時点で観光客の多い国」ではなく、「将来、観光産業がどれだけ伸びるか」というポテンシャルの高さや持続可能性も競います。西山先生がおっしゃったような日本の強みが、将来的に観光産業のポテンシャルが非常に高いという評価を受けたということです。発展途上国の政府もこのランキングを見ていますので、このランキングで日本が上位に入るようになってから、「日本から観光を学びたい」というニーズが増えているように思います。
JICAは1980年代から4つの分野で観光開発支援をしています。1つは「政策」。持続可能な観光開発のための政策づくりを支援しています。2つ目は「人材育成」。ホテルの従業員の育成、観光ガイドのスキルアップ支援、政府の観光職員にもアドバイスをします。3つ目は「プロモーション」。観光客を誘致するためのプロモーション施策の支援だけでなく、観光客にどういうPRをするか、受け入れる側の準備も整えます。そして、4つ目が「観光インフラ開発」。空港や博物館などの建設等を支援しており、有名なのは開館が待たれる「大エジプト博物館」などがあります。