ブラピとアンジーの不朽の名作「スミス夫妻」がアマプラでリメーク、新生版はリアル路線
夫婦と偽ってスパイ活動をするジェーン(写真)とジョンは、さまざまなミッションをこなしていく AMAZON MGM STUDIOS
<ブラッド・ピットとアンジェリーナ・ジョリーの色気あふれる傑作を再構築した『mr.&mrs.スミス』が描く一味違う親近感と奥深い結婚観>
主演した2人の特別なエロティシズムが命だった映画を、今さらリメークしようとするなんて......。
だが、あの時代の多くのものと同じように、2005年の映画『Mr. & Mrs. スミス』も作り直されてしまった。
アマゾンプライム・ビデオのリブート版ドラマ『mr.&mrs.スミス』は、ドナルド・グローバーありきの作品だ。
本作のクリエーターであり、共同脚本・監督も手がけ、主人公のジョンを演じている。
もう1人の主人公、ジェーンに扮するのはコメディードラマ『PEN15』で知られるマヤ・アースキンだ。
当初の予定が大幅に遅れ、ジェーン役に決まっていたフィービー・ウォーラーブリッジが降板した末、本作は2月にようやく配信された。
残る疑問は1つだ。
果たして、これは映画版と同じくらいセクシーなのか?
コメディードラマ『アトランタ』でグローバーと手を組んだフランチェスカ・スローンが共同クリエーターを務める本作は、映画版の設定をひっくり返している。
ジョンとジェーンは他人同士で、謎の組織の指示を受け、夫婦を装って一緒にスパイ活動をすることになる。
むしろ、1996年に放送されたテレビドラマ『Mr. & Mrs. スミス』に近い話だと思うかもしれない。
だが、本作が映画版を再構築しようとしているのは明らかだ。
確かに、ブラッド・ピットとアンジェリーナ・ジョリー主演の映画にあった性的緊張は再現できていない。とはいえ、それは長所だ。
00年代半ばのピットとジョリーの魅力と肩を並べるのは誰にとっても難しい。
見た目だけではない。なまめかしい声のジョリーと自信たっぷりのピットには、官能と誘惑があふれていた。
映画スターというよりコメディー系の俳優であるグローバーとアースキンが「ブランジェリーナ」の沸騰感を出せるわけがない。
だが、これは喜ばしいことだ。
今や各種配信プラットフォームで視聴できる過去の映画を、ひたすらなぞった「リメーク」ほどつまらないものはない。
新たなスミス夫妻には、映画版とは全く異なる何かがある。
ロマコメ作品で味わうような親近感だ。
2人が醸し出すぎこちない魅力は、憧れではなく、現実の自分との近さを感じさせてくれる。