最新記事
メンタルヘルス

大坂なおみが語る「だから私は心の問題を訴えた」

NO COMMENT

2024年2月7日(水)15時54分
ベン・ローゼンバーグ(ジャーナリスト)
大坂なおみが語る「だから私は心の問題を訴えた」

警察の人種差別的な暴力に抗議し、4大大会で会見を拒否するなど、大坂はプレー以外の行動でも話題をさらった KELLY DEFINA/GETTY IMAGES

<3年前に記者会見拒否を宣言したテニスの元女王が、そこに至った大きすぎる苦悩と葛藤を振り返り、自身の言葉で思いを語った>

テニスの4大大会を4度制し、最も高収入の女性アスリートにもなった大坂なおみは、人種をめぐる正義とメンタルヘルスの両方に絡むスターとして大きな注目を浴びた。

2020年の全米オープン。直前にウィスコンシン州ケノーシャで黒人男性が警官に撃たれて下半身麻痺になった事件があった。

これを受けて、大坂は警察の人種差別的な暴力の被害に遭った黒人の名前を入れたマスクを着け(名前は試合ごとに替わった)、話題を呼んだ。

そして大坂は優勝した。

21年の全仏オープンの前にはメンタルヘルスを理由に、大会中は記者会見を行わないと宣言。

主催者側が厳しい罰金と失格の可能性を含む処分を科すと通達したため、大坂は1回戦に勝った後に大会を棄権した。

その大坂が今年1月、コートに帰ってきた。

22年9月以来の休養と娘の出産を経て26歳になった彼女は「またテニスに戻れるのは最高」と語っている。

ジャーナリストのベン・ローゼンバーグは新著『大坂なおみ──パワーと声を探す旅』(ダットン社刊)で、大坂が直面した苦難と葛藤を描いた。

一人の女性がいかにしてメンタルヘルスの問題をテニス界に、そして世界に注目させたのか。以下に紹介する同書の抜粋は、その舞台裏をつづっている。

◇ ◇ ◇


大坂なおみは、2021年の全仏オープンで最も話題になる選手ではなかったはずだ。

それに先立つ2つの4大大会で優勝していたが(20年全米オープンと21年全豪オープン)、彼女がクレーコートを苦手としていると知り、直近の敗戦を目撃した専門家らは、大会前に彼女に大きくスポットを当てなかった。

なおみはこの年の全仏オープンで世界ランキング1位に返り咲く可能性もあったが、直近の調子を考えれば、その点に触れる声はほとんど聞かれなかった。

オッズメーカーも同様に、彼女が全仏オープンに優勝する可能性を5番手程度とみていた。

前評判でトップのアシュリー・バーティは19年に全仏に優勝して以来、初めてこの大会に戻ってきた。

前回王者のイガ・シフィオンテクは、直前に開かれたイタリア国際決勝でカロリナ・プリスコバに6-0、6-0のスコアで圧勝していた。

夜11時24分、全てが変わった

これまでなら、なおみの大会開幕前のSNS投稿は、紫色に輝く全仏オープン仕様のナイキのシューズを見せびらかしたり、センターコートでカメラに向かってジャンプして笑ったりする写真が定番だった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

決算に厳しい目、FOMCは無風か=今週の米株式市場

ビジネス

中国工業部門企業利益、1─3月は4.3%増に鈍化 

ビジネス

米地銀リパブリック・ファーストが公的管理下に、同業

ワールド

米石油・ガス掘削リグ稼働数、22年2月以来の低水準
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 4

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 5

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 6

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 7

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 8

    アカデミー賞監督の「英語スピーチ格差」を考える

  • 9

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 8

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 9

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 10

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中