ゾンビのように歩き、激しくセックス...『哀れなるものたち』女優の恐ろしく優れた大胆な演技に感服
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性に目覚めたベラは生みの親の元を離れ、ダンカンと旅に出る ©2023 20TH CENTURY STUDIOS. ALL RIGHTS RESERVED.
<ゴールデングローブ賞をダブル受賞! エマ・ストーン主演、ヨルゴン・ランティモス監督がこだわりを詰め込んだ「フランケンシュタインの女性版」の物語>
ギリシャの映画監督ヨルゴス・ランティモスは、この15年ほどの間に作風の大きく異なる作品をいくつも発表してきた。だがどの作品にも、彼の好む主題が必ず顔を出す。
出世作の『籠の中の乙女』(2009年)は、3人の子供を大きくなっても家の敷地内に閉じ込め、外の世界について嘘を教える横暴な夫婦の物語だ。『ロブスター』(2015年)は寓話的な世界が舞台で、恋愛相手を見つけられなかった独身の成人は、動物に姿を変えられる決まりになっている。
最大のヒット作『女王陛下のお気に入り』(2019年)は、超様式化された歴史ドラマ。陰謀渦巻く18世紀のイギリス宮廷を描く究極のブラックコメディーだ。
さて最新作の『哀れなるものたち』は、スコットランドの作家アラスター・グレイの同題の小説の映画化だ。監督が長年、強迫観念のように抱えてきたテーマ──閉じられたシステムにとらわれる恐怖、とらわれの状態から脱出しようとする個人の、時に自己破壊的な行動、親から受けたトラウマの影響でゆがむ子供の心、そして人体の持つ変身能力──の集大成でもある。
フランケンシュタイン伝説の女性版の物語でもあり、主人公のベラをエマ・ストーンが演じる。私としては、これまで見たランティモス監督作の中で一番(唯一、と言い換えてもいいかもしれない)好きな作品だ。終盤になっても話の筋がまとまらないようなところはあるにせよ。
ゴドウィン・バクスター(ウィレム・デフォー)は19世紀のロンドンを思わせる町に住む醜い科学者だ。彼は胎児の脳を死んだばかりの女性に移植し、蘇生させるという禁断の実験を行い、その結果を観察するために彼女(ベラ)を養女のように育てる。
当初のベラは、体は大人なのに頭の中は赤ちゃんだから、食べ物で遊ぶし、歩き方もよちよち歩きだ。ゴドウィン(ベラからはゴッドと呼ばれる)とその助手の指導の下、ベラの精神は急速に赤ちゃんから子供、そして若者へと成長していく。
ゴドウィンはベラを、自分の思いどおりに染められる真っさらな存在だと思い込んでいた。だがベラが自慰というものを「発見」するや、ゴドウィンは彼女を支配することができなくなる。
そして、ベラが遊び人の弁護士ダンカン(マーク・ラファロ)と初めてのセックスをした瞬間、画面はメリハリのあるモノクロから官能的なカラーに変わる。ベラは世界を探検すると決意し、ダンカンと一緒に欧州大陸へ旅立つことで自立を果たそうとする。