日本人も日本人に殺された...映画『福田村事件』が描く「普通の村人」による虐殺【森達也監督に聞く】
When People Are Running Out of Control
――東出さんは不倫騒動でたたかれていた時期?
少しほとぼりが冷めかけた頃だと思う。僕の中で彼の印象はそんなに強くなかったが、今回は本当に惚れ直した。役者はみんなすごかったです。しっかり役作りしてきてくれたから、あまり僕から言うことはなかった。
――劇映画はまた撮ってみたいか。
うん。実は3年前からドキュメンタリーを1本撮っていて、それは継続しつつ、ドラマでもまた何か、と思っている。いつかやってみたいのはホラー映画。映画作りの王道というか、映画作法のいろいろなチャレンジができて、楽しいんじゃないかな。
――あの虐殺のようなことは今の日本では起きないはずだが、その歴史を知る意味は?
集団化という点では、むしろ大正時代より今のほうが強いんじゃないかな。不安と恐怖があるから人は集団化を起こす。台湾有事、北朝鮮のミサイル、ロシアの侵攻などで、今は「戦後最も危機的な安全保障環境」にあると言われている。
「キューバ危機やベトナム戦争があったじゃん?」と思うが、言い換えれば不安と恐怖が高まっているということで、何かをきっかけに集団化が起きるのではないか。
竹やり持って、というようなことはないだろうが、(在日コリアンが多い)京都・ウトロ地区への放火のようなヘイトクライムがあったり、入管法改正もその流れだと思う。
本音は外国人を入れたくない、日本人でまとまりたい。欧州で移民排斥の政党が支持を集めているのも不安と恐怖からで、世界中で集団化が進んでいる気がします。その意味で、「100年前の事件だね」では終わらないと思う。