ハリウッドスターがストを行っているのはなぜ? AIの「合成俳優」に揺れる米エンタメ界、エキストラをコピペで複製!?
デジタルレプリカ
制作側と俳優側の意見が対立しているもう1つの問題は、エキストラのデジタルレプリカ(複製)作成だ。制作業界団体の全米映画テレビ制作者協会(AMPTP)は、ある作品に出演したエキストラ俳優のデジタルレプリカをその作品以外に使用する許可を、当該俳優から得ようとしている。
デジタルレプリカの使用料は俳優と協議し、SAG-AFTRAとの合意で定められた最低限のエキストラ使用人数に違反しない範囲でこうしたデジタルレプリカを活用する考えとされる。
しかしSAG-AFTRAは、制作側が受け入れているのはあくまで当初起用時に承諾を得ることで、これは追加報酬という考え方に反すると異を唱えている。
クラブツリー・アイルランド氏は「実際に意味するのはこれらの制作会社がエキストラ俳優に『われわれの要求に応じないならあなたは雇わず、別の誰かで補充する』と伝えることだ。それでは意義のある同意にはならない」と指摘した。
制作側はまた、3Dボディスキャンで俳優の姿形を取り込むという長年の慣行を継続し、AIによるデジタルレプリカ生成に妥当性を持たせようとしている。つまりこれは撮影終了後の編集などの「ポストプロダクション」作業において、俳優の顔を正確に置き換えたり、画面上の「替え玉」を生み出したりするために使われるとみられる。
こうした作業で制作側は俳優の同意を得た上で、レプリカ使用に際して個別の話し合いに応じると約束している。
クラブツリー・アイルランド氏は、もちろん適切な同意や報酬が確立されるならばこの作業は可能だと述べた上で、組合にとっての懸案は将来の作品のためにデジタルレプリカの権利を保持し、俳優の実効的なバーチャル肖像権を手に入れることだと強調した。
制作側も新たな権利を確保したがっている。それはポストプロダクション作業でキャラクターや脚本、監督の構想に沿った形でデジタル技術を駆使して演技内容を変更するという権利だ。具体的には台詞の1つか2つを置き換える、あるいはデジタル衣装を素早く切り替えるなどで、撮り直しのコストを何十万ドルも節約できるという。
そのため通常のポストプロダクションでは収まらない修正作業を俳優側も受け入れてほしい、と制作側は提案している。
ただSAG-AFTRAは、それはAIの過剰行使だと反発。俳優の肖像や姿形、声の変更に事前の許可を求める構えだ。
(Dawn Chmielewski記者)

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