最新記事
反田恭平現象

佐渡裕が語る、ピアニスト反田恭平の魅力と世界への道のり

Onward to the World

2023年7月6日(木)11時50分
佐渡裕(指揮者)

反田君は今後ピアノを弾きつつ、指揮者の道を歩むそうだ。2段しかないピアノの譜面とは違い、30段も40段もある膨大な譜面を読み込み、細部にまで神経を張り巡らせながら指揮棒を振る仕事は並大抵ではない。

1989年にフランスのブザンソン国際指揮者コンクールで優勝した僕にとって、コンクールでの優勝は茨の道の始まりだった。オーケストラに正確に指示を出すのは当然として、高い音楽性を伴っていなければヨーロッパでは相手にされない。

言葉の壁もある。「良くなかった」という評価を下されれば、次は二度と呼ばれない。「まあまあだったな」という指揮者は誰の記憶にも残らないから、これまた次の仕事にはつながらない。厳しい世界だ。

とうとう僕がベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の指揮台に立てたのは、コンクールで優勝した28歳から22年後、50歳になったときのことだった(11年5月)。

反田君にとって、ショパンコンクールは音楽家として世界に羽ばたくための大きなきっかけとなった。コンクール前から、既に日本国内ではチケットが手に入らない状況が続いていたわけだ。次ははっきりと、貪欲に世界を目指してほしい。

反田君は、僕が音楽監督を務めるオーストリアのトーンキュンストラー管弦楽団と共演し、ウィーンデビューを果たした(20年10月)。今年3月にミュンヘンで開かれたコンサートも成功したと聞く。

音楽家として世界で通用することは既にはっきりしている。オーストリア、ドイツ、イタリア、フランス、イギリス、アメリカ――どんどん打って出て勝負してほしい。

構成・荒井香織(かおる、ルポライター)

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 3
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 6
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 7
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 8
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 9
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 10
    強烈な炎を吐くウクライナ「新型ドローン兵器」、ロ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中