「ジャニーズ神話」が死んだ日...潮目が変わった「公然の秘密」性加害タブー
THE END OF THE MYTH
韓国エンタメ業界との違い
なぜJポップは海外進出で後れを取ったのか。1つには、ジャニー喜多川の関心がもっぱら国内に向けられていたという事情がある。それに、彼は最後までインターネットの世界になじめなかった。
KポップはSNSを通じてアイドルとファンの関係性に革命を起こしたが、ジャニーズ事務所が所属アーティストの動画のネット配信を解禁したのは、ようやく5年前のことだ。
少子化で国内市場は縮む一方だから、ジャニーズ事務所も攻め続けなければ生き残れまい。ちなみにジャニーズ事務所を退所し独立した元SMAPの香取慎吾は、40代になってからネット空間に参戦したが、今やインスタグラムだけで100万人以上のフォロワーがいる。
言うまでもないが、Kポップの世界もセクハラ、パワハラに毒されている。しかし韓国では、アーティストたちが自ら事務所側と戦ってきた。
結果、今では事務所側が彼らに「無期限の年季奉公を強いる」ことは不可能になったと、ビルボード誌のシュワルツは言う。最近も人気グループEXOのメンバーが所属事務所との契約を解除し、正当な報酬の支払いを求めて提訴している。
こうした動きを、韓国ではファンもメディアも、そして政治家も支持している。韓国政府も、芸能界にはびこる虐待の風土には日本政府よりはるかに厳しく対処してきた。
ジャニーズ事務所は6月9日、設置済みの「外部専門家による再発防止特別チーム」は「第三者委員会としての機能を有している」とし、「過去の対応上の問題点を調査し、ガバナンス上の問題に関する再発防止策を提言する」と発表した。過去と決別するために社名を変える可能性も否定できない。
BBCのアザーは「声を上げたサバイバー(性暴力を生き抜いた人)たちに勇気づけられる。潮目は少しずつ変わってきた。議論が起きていることに励まされるが、やるべきことはまだまだ多い」と言う。
先のことは分からないが、これだけは言える。もはや、ジャニーズ神話は死んだのだ。