「やっぱり家がいい」──旅行嫌いのための面白い旅番組とは?
Eugene Levy, Reluctant Traveler
「旅番組は好きでも旅はしたくない人にこそ見てもらいたい」 CHARLES SYKESーBRAVOーNBCU PHOTO BANK/GETTY IMAGES
<「旅番組を見るのは好きでも、自分は旅はしたくない」。旅行に興味はないと語る俳優ユージン・レビィが、旅番組に嫌々出演。76歳にして「一皮むけた自分にびっくり」した理由とは?>
動画配信サービス、アップルTVプラスの新しい旅行番組『旅嫌いユージン・レビィのトラベルガイド』は、まさに題名どおりの内容だ。
出演を打診されたとき、俳優であるレビィはこう思った。「私のやる仕事じゃない。旅行に興味なんてないのに」
だが、それこそが企画の意図だと知って、彼は出演を承諾した。例えば、コスタリカの熱帯雨林の夜のハイキング。「全く面白いと思わなかった。『そこのクモに気を付けて』とか。そもそもね、クモなんて遠慮したいんだよ。ホテルのバーに戻りたいってね」
フィンランドでの食事もしかり。「何を食べさせられるのか不安だった。魚はあまり好きじゃないんだ。だとすると何が残る? トナカイ?」
だがレビィはすぐに、「これまで行ったことがない場所について、行きたくないと言ってはならない」と悟る。そして「この番組のおかげで、私は一皮むけた気がする。自分で自分にびっくりだよ」とも語る。
「本当にいい経験をさせてもらったと思う。76歳にして、こういう機会を与えられて......新たな展開を目の当たりにしている感じだ」。
ライターのH・アラン・スコットが話を聞いた。
――私は旅行番組が好きなわりに、旅行そのものは嫌いというタイプの人間なんですが。
まさに君みたいな人に見てもらいたいんだ。(旅慣れた視聴者には)そういう(旅嫌いによる旅番組という)ところを面白がって笑ってもらいたい。でも旅行嫌いで、自分には絶対にこんな旅行はできない、やっぱり家がいいと思っているかもしれない人に向けた番組でもあるんだ。
――そんな番組を作ろうというアイデアはどこから?
代理人から電話が来てね。アップルから話があるというんだ。電話口で私は、出たくないありとあらゆる理由を並べた。気さくに誰とでも話せるタイプじゃないし、明るい性格でもないし、好奇心にも冒険心にもあふれていない。
ところがプロデューサーが、まさにそういう番組を作りたいんだと言ってね。旅行番組だけれど、旅行はあまり好きではない人の旅を描くのだと。