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日本と香港を押しのけ、韓国エンタメが30年前に躍進し始めた理由

2022年10月22日(土)14時50分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

2000年代:日本市場での成功

1990年代に始まった韓国コンテンツのグローバル化は、2000年代に入ってから本格化します。この時期は、韓国コンテンツにとって日本市場がとても重要な意味を持ちます。なぜなら、2001年にBoAが日本デビュー。2003年にはドラマ「冬のソナタ」がNHKで放送され、主演俳優ペ・ヨンジュンの人気も相まって空前の大ヒットとなったからです。

いわゆる「韓流ブーム」の到来です。またその後の2005年には東方神起が日本デビュー、2008年に楽曲「Purple Line」でオリコンチャート1位を獲得しました。

このような予想を超えるほどの大きな韓流ブームに韓国も驚きましたが、この時代に大きな特徴として挙げられるのは、徹底的な現地化戦略です。わかりやすく説明しますと、当時はBoAや東方神起などが日本で活動をするために日本に居住しながら日本語を一から学び、日本語で楽曲を歌いました。時には日本人の好みに合わせた新しい曲も作っていました。

つまり、初めから日本を狙い撃ちしてプロデュースされたということです。ただし、こうした現地化戦略は韓国の大手芸能事務所であるSMエンターテインメントに所属しているBoAや東方神起だからこそ実現できたことでもあります。なぜならここまで準備を整えるのには巨大な初期費用がかかるからです(注7)。

※注7:BoAを発掘し日本進出を仕掛けた当時の総括プロデューサー(SMエンターテインメントの創業者)である李秀満(イ・スマン)氏は、韓国より大きい規模である日本音楽市場(当時世界2位)へ強い興味を持ち、BoAへの投資費用が40億ウォン(約4億円)であったと、あるインタビューで明らかにしました。

今はK‒POPのアーティストがわざわざ現地に住んだり、その国の言葉を話さなくても、受け入れられるようになりました。むしろ、韓国本場のオリジナリティをそのまま感じたいというK‒POPのファンが世界中に増え、アーティストが韓国にいながらでも世界で流行ることも珍しくありません。

しかし、K‒POPとしてのジャンルが確立されておらず、SNSが発展途上だった2000年代は、現地化することでしか成果を出しづらかったのです。

コンテンツ・ボーダーレス
 カン・ハンナ 著
 クロスメディア・パブリッシング

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