私たちはすでに「起業家マインド」を育てている──フリマアプリと「一億総株主」時代
loveshiba_-iStock
<利用者を伸ばし続けるフリマアプリとYouTube。プラットフォーム上で、利用者は「起業家マインド」を鍛えているが、実はその歴史はすでに90年代には始まっていた。その背景にあったものとは?>
「一億総株主」という言葉を耳にしたことがあるだろうか。2022年5月30日、自民党の経済成長戦略本部は政府に対して提言を申し入れ、資産所得の向上と消費拡大にむけて、NISA(少額投資非課税制度)の抜本的な拡充を求めた。その貯蓄から投資への流れを政治が後押しする狙いを「一億総株主」と表現された。(※1)
これには前史がある。1990年代後半以降の日本政治は、個人が投資に乗り出しやすい環境づくりに腐心してきた。貯蓄から投資へという考え方は、すでに90年代後半から存在し、2000年代にはNISAなどの税制優遇制度が整えられた。この時期は、日本の長期不況と重なっている
起業家マインドの浸透とフリマアプリ
「一億総株主」という言葉にさほど違和感はない。そのような環境が様々な経路を通して作られたのが、この20年間だった。その一例として、フリマアプリがある。
私自身、数カ月前、フリマアプリを始めてダウンロードして以来、毎日利用している。他のサイトと金額を比較し始めると、どんどん時間が溶けていく。
先日は、届いた商品を手にして「なぜ自分はこれを欲しいと思ったのか」を思い出せないということもあった。フリマアプリでは、「欲しい」という気持ちをうまく方向付けるフォーマットが巧みに設計されており、芋づる式に商品が出てきて、探す喜びがある。
そのフリマアプリだが、近年では中高年の利用者が増えていることもあり、市場規模は拡大の一途を辿っている。メルカリ、楽天のラクマ、ソフトバンク系のペイペイフリマなどの広告を目にする機会も増えた。
2021年9月に「リサイクル通信」が発表した調査結果によると、2020年のリユース市場規模は2兆4169億円に及び、今後も拡大すると予想されている(※2)。
直近の報道によれば、メルカリは2021年7月から2022年6月までの期間で75億円の業績赤字を記録したが、売上高自体は38.6%増の1470億円で、過去最高を記録している。やはり市場規模は拡大傾向にある。
フリマアプリが他のネット・ショッピングと異なるのは、出品者(売り手)になりやすいという点に尽きる。以前から存在する「Amazonマーケットプレイス」や「ヤフオク!」よりも、手軽に出品者になれるというのは、利用したことがあれば誰もが感じるところだろう。
出品者の側からみれば、まだ使えるモノを捨てずに済むという、地球に優しいというエコロジーの感覚を得られるのもあるかもしれない。また、強気の値段設定で売れたら嬉しいし、市場の動向をみて「せどり」や「転売」を試みるなど、「小商い」の楽しさもある。