36年たっても昇進していない、「あの男」が帰ってきた
A Great Summer Movie
「超高速飛行」の見せ場は変わらず ©2022 PARAMOUNT PICTURES. CORPORATION ALL RIGHTS RESERVED.
<前作を見ていなくても、十分に楽しめる。スタントマンも特撮も嫌いな59歳、いぶし銀のトム・クルーズが魅せる、21世紀版『トップガン』>
来るべき未来に「おまえの居場所はないぞ」。相変わらず平気でルールを無視する戦闘機乗りの「マーヴェリック」ことピート・ミッチェル(トム・クルーズ)に、厳格な上官(ジョン・ハム)はそう通告した。さらに上官の海軍少将(エド・ハリス)も「おまえみたいなのは絶滅危惧種だ」と言い渡す。だが不屈の戦闘機乗りは瞳を輝かせ、こう答えるのだった。
「そのとおりです。が、まだ絶滅してません」
トム・クルーズの出世作『トップガン』が36年ぶりに戻ってきた。創業110年の老舗パラマウントが1億5200万ドルの製作費を投じた、今夏の意欲作だ。
1986年公開の元祖『トップガン』は時代錯誤な愛国映画と見なされ、決して事前の評価は高くなかった。しかし公開されるや想定外の大ヒットとなり、サウンドトラックのアルバムも歴史に残るベストセラーになった。
もちろん、その後の年月で映画の製作や配給、そして映画の鑑賞体験を取り巻く状況は一変した。今の時代に生身の中年男を主人公とし、アニメのスーパーヒーローも登場しないアクション映画に巨費を投じるのは無謀だった。その「中年男」が、トム・クルーズでない限りは。
36年もたったのに、『トップガン マーヴェリック』のオープニングは昔とほとんど同じだ。インタータイトルの文言や書体もそっくりだし、音楽はケニー・ロギンスの、そう「デンジャー・ゾーン」。これがまた実に懐かしくて、往年のファンなら思わず全身が震えだすはずだ。さあ、準備はいいかな、いざ超音速の冒険が始まるぞ。
危険な飛行シーンは健在
海軍航空隊に入隊してから40年近い歳月が流れても、異端児マーヴェリックはちっとも昇進していない。型破りな言動は相変わらずで、ある問題行動を理由に降格処分となった彼は、なぜか自らが新人時代に所属したパイロット養成チーム「トップガン」で教官を務めることになった。
彼が担当するのは、国外での特殊任務のために選び抜かれた若きパイロット集団。中には唯一の女性フェニックス(モニカ・バルバロ)もいれば、若い頃のマーヴェリック同様にうぬぼれ屋で自信過剰なハングマン(グレン・パウエル)もいる。