ロシアのもう1つの「罪」、陰惨な同性愛弾圧を暴く映画『チェチェンへようこそ』
Unveiling the Truth
性的少数者に対する迫害は現在もチェチェンで続き、市民団体がロシア連邦裁判所に提訴したが退けられた。人権侵害は普遍的な裁判管轄が認められることから、市民団体が欧州人権裁判所やドイツ連邦裁判所にも提訴しているが、内政不干渉の原則もあり実効性のある救済は難しい。
映画の中で、リスクを冒し支援活動に取り組んだ市民活動家は、人道ビザを得て迫害を逃れた性的少数者がたとえロシア国外に脱出し第三国に定住しても「一生隠れて生きていくことになる。安住の地を見つけたとしても、一生夜の暗闇を恐れて生きていく」ことを危惧する。
しかしウイグルや香港での人権弾圧や北朝鮮による拉致と同じく、虐げられている被害者の「顔」を思い起こすことが人権救済の第一歩になることも、この映画は教えてくれる。チェチェンにおける性的少数者の「存在の否定」という人権侵害を暴いたこの映画は「とにかく殺されない限り、私たちの勝利だ」という言葉で終わる。「私たち」とは誰のことだろう。
WELCOME TO CHECHNYA
『チェチェンへようこそ──ゲイの粛清──』
監督╱デービッド・フランス
主演╱マキシム・ラプノフ、デービッド・イスティーフ
日本公開中