最新記事

ドキュメンタリー

ロシアのもう1つの「罪」、陰惨な同性愛弾圧を暴く映画『チェチェンへようこそ』

Unveiling the Truth

2022年3月4日(金)19時20分
北島純(社会情報大学院大学特任教授)

220308p50_utt03.jpg220308p50_utt04.jpg220308p50_utt05.jpg

映画では本名を明かした瞬間に素顔が現れる ©︎MADEGOOD FILMS

性的少数者に対する迫害は現在もチェチェンで続き、市民団体がロシア連邦裁判所に提訴したが退けられた。人権侵害は普遍的な裁判管轄が認められることから、市民団体が欧州人権裁判所やドイツ連邦裁判所にも提訴しているが、内政不干渉の原則もあり実効性のある救済は難しい。

映画の中で、リスクを冒し支援活動に取り組んだ市民活動家は、人道ビザを得て迫害を逃れた性的少数者がたとえロシア国外に脱出し第三国に定住しても「一生隠れて生きていくことになる。安住の地を見つけたとしても、一生夜の暗闇を恐れて生きていく」ことを危惧する。

しかしウイグルや香港での人権弾圧や北朝鮮による拉致と同じく、虐げられている被害者の「顔」を思い起こすことが人権救済の第一歩になることも、この映画は教えてくれる。チェチェンにおける性的少数者の「存在の否定」という人権侵害を暴いたこの映画は「とにかく殺されない限り、私たちの勝利だ」という言葉で終わる。「私たち」とは誰のことだろう。

WELCOME TO CHECHNYA
チェチェンへようこそ──ゲイの粛清──
監督╱デービッド・フランス
主演╱マキシム・ラプノフ、デービッド・イスティーフ
日本公開中

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

新型ミサイルのウクライナ攻撃、西側への警告とロシア

ワールド

独新財務相、財政規律改革は「緩やかで的絞ったものに

ワールド

米共和党の州知事、州投資機関に中国資産の早期売却命

ビジネス

米、ロシアのガスプロムバンクに新たな制裁 サハリン
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 4
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 5
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 6
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 7
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 8
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 9
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 10
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 6
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 7
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 8
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 9
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 10
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中