自堕落で自意識が高く、愛に飢えた高校生たち...その悩みに「大人」も共感できるわけ
Love and Loss Never Go Away
薬物依存症のルー(左)を中心にドラマはいじめや性に悩む10代を描く EDDY CHEN/HBOーSLATE
<麻薬やセックスに溺れ、SNSで愛と友情を求める今どきの高校生たちを描いた群像劇──。ドラマ『ユーフォリア』に、大人たちまでもが夢中になる理由>
『セックス・アンド・ザ・シティ』(SATC)が帰ってくると聞いたときは、それはもう興奮した。
私は40~50代(いわゆるX世代だ)の女性に向けて発信している51歳のカルチャー系ブロガー。私のような中年女が対象のドラマには、「待ってました!」と言いたくなる。
「私のような」は言いすぎかもしれない。ドラマ『SATC』の主人公キャリーのようにマノロ・ブラニクの靴やフェンディのバッグでクローゼットをぱんぱんにできる人間は、そう大勢はいない。
それでも続編にはきっと自分を重ねられる。中年ならではの悩みと格闘する登場人物に共感できる。そう思うと、成熟したヒロインたちとの再会が楽しみでならなかった。
期待に胸を高鳴らせポップコーンの大皿を抱えて、私は『AND JUST LIKE THAT... / セックス・アンド・ザ・シティ新章』(U-NEXTで配信中)を見た。
するとキャリーと仲間たちは確かに悩んでいたが、その悩みは世間の中年とはずいぶんズレていた。新しい友達はどんな性格なのか、LGBTQの人称は何を使えばいいのか、平日にカクテルを飲むなら何杯までが適量なのか。そんな話に主要キャラクターの死を盛り込めば、中年向けドラマは完成だとでも思っているのか。
やめた。中年向けのドラマなんて、やっぱり見たくない。私は『新章』を見限り、『ユーフォリア/EUPHORIA』(U-NEXTで配信中)に乗り換えた。
中年の私がティーンドラマに夢中に
動画配信サービスHBO Maxのウェブサイトによれば、こちらは「麻薬、セックス、心の傷とソーシャルメディアの世界で愛と友情を求める高校生」の群像劇。だがそれだけでは説明が足りない。
『ユーフォリア』は胸の内を赤裸々にぶちまけ、万事に過敏に反応し、薬物やアルコールを燃料に怒りをたぎらせ、絶え間なく自分を意識し、容赦なく自分に批判的な今どきの10代をめぐる痛ましくも不穏な考察だ。
キャラクターたちは過剰な刺激にさらされ、頭はセックスのことでいっぱい。有頂天だったかと思うと、次の瞬間にはスマホに届いたメッセージ1つでどん底に落ちる。
そんなドラマに私はハマった。同世代向けの『新章』を捨て、対象の視聴者が何十歳も下のティーンドラマに夢中になったのはなぜなのか。
『ユーフォリア』に登場するZ世代の高校生はとにかく行動がぶっ飛んでいて、感情に振り回される。衝撃、羨望、共感、嫌悪、希望、不信感、理解。そして見ている私も彼らの心の動きを共有し、連帯感すら抱く。
友人を連想させるキャラクターは出てこないし、X世代の私が高校生だった頃はあんなふうに自分をさらけ出さなかった。なのに「分かる分かる」とうなずいてしまう。