最新記事

アート

NFTにオークション大手が続々参入 「変化するアート」今後の課題は

2021年11月15日(月)13時18分

トレンチェフ氏によれば、「サル」を購入したのは、オンライン世界での「メタバース」の興隆を背景に、NFT市場が今後も成長を続けることに賭けたからだという。メタバースでは、アバターやファッションアイテムから、土地やビルに至るまで、事実上何でも売買できるのだ。

そう、デジタルアートはNFTの爆発的な売上増加から見れば氷山の一角にすぎない。NFTの販売額は、2021年第3・四半期だけで前期の8倍に相当する100億ドルを超えた。

トレンチェフ氏は「NFT用の金融ツールを新たに開発中だ。これがNFTというアセットクラスの普及を刺激するだろう」と語り、ネクソがNFTを原資産とする新たな金融商品を販売する可能性を示唆した。

メタバースに賭けているのは彼らだけではない。その名も「メタ」という新たな社名を掲げる時価総額1兆ドル近い企業、フェイスブックもその1つだ。ますます没入感を高める仮想環境・仮想体験こそが未来である、というのが同社の計算だ。

ひっくり返された伝統

ザッカーバーグ氏の予知能力の有無については将来的に分かるだろう。NFTブームは、シリコンバレーより数百年も長い歴史を持つオークション業界を新しい世界へと引きずり込みつつある。

オークションハウス大手各社は、新世代の購入者を集めるべく、ソーシャルメディアの活用に乗り出している。

クリスティーズでデジタルアート営業部門を率いるノア・デービス氏によれば、見込み客となるNFT購入者は、彼が美術コレクターを集めるときのお約束だった格式を捨てることを歓迎しているという。最近では、メッセージングアプリのディスコード経由で契約交渉を行い、オークションへの参加者登録をツイッター経由で案内している、と同氏は説明する。

「SNSは仕事の場だ。顧客サービスはSNS上で済んでしまう」とデービス氏はロイターに語り、伝統的な手法と比べて、このプロセスの圧倒的なスピードには驚かされる、と言葉を添える。

もうひとつ、大きな変化がある。オークションハウスはしばしば、クリプトアーティストから直接NFTを買い付けるという点だ。多くの場合、ほぼ正体不明の、ハンドルネームで呼ばれる作家らだ。

対照的に、リアルな美術市場では作家らがまず作品を売る相手は画廊であり、オークションハウスは伝統的に二次市場での販売に特化している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

カタール首長がシリア訪問、旧政権崩壊後元首で初 暫

ワールド

ドバイ国際空港、2024年の利用者は過去最多の92

ワールド

民間機近くの軍用ヘリ飛行を疑問視、米上院議員 空中

ワールド

ロシアの穀物輸出、EUの船舶制裁が圧迫 中銀が報告
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ革命
特集:トランプ革命
2025年2月 4日号(1/28発売)

大統領令で前政権の政策を次々覆すトランプの「常識の革命」で世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 4
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 5
    東京23区内でも所得格差と学力格差の相関関係は明らか
  • 6
    ピークアウトする中国経済...「借金取り」に転じた「…
  • 7
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 8
    空港で「もう一人の自分」が目の前を歩いている? …
  • 9
    トランプのウクライナ戦争終結案、リーク情報が本当…
  • 10
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 3
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果が異なる【最新研究】
  • 4
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 5
    緑茶が「脳の健康」を守る可能性【最新研究】
  • 6
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 7
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 8
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 9
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 10
    煩雑で高額で遅延だらけのイギリス列車に見切り...鉄…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀…
  • 5
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 9
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
  • 10
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中