「レオ様」激似の顔を持つ男...その数奇な運命と、たどり着いた境地
I’m a DiCaprio Lookalike
空港で日本人女性に囲まれて
ディカプリオはカリフォルニア州パームスプリングスに広壮な邸宅を構えている。彼がそこで過ごすのはおそらく年に数週間程度。残りの時期は管理会社が企業や個人に貸している。希望があれば、私が呼ばれ、ディカプリオなり、彼が映画『華麗なるギャツビー』で演じたジェイ・ギャツビーに扮して滞在客を迎え、敷地内を案内する。
そっくりさんと分かっていても、レオ様に会った気分になるだけで、お客はとても興奮する。私はディカプリオになり切って誠実な対応を心掛ける。女性たちは私を質問攻めにし、私と並んで自撮り写真に収まり、「レオ様に夢中なの」「レオ様は初恋の相手」などと熱っぽく語り掛ける。
もっとも、彼女たちは節度を心得ている。「ごめんなさい。私には妻がいるので」などと断わらざるを得ないような厄介事はまず起きない。
あるとき休暇旅行でイスタンブール空港にいたら日本人のツアー客に囲まれ、女性たちにサインをねだられた。本物ではないと説明したが、言葉が通じないらしく諦めてくれない。やむなく自分の名前をサインして回り、そそくさとその場を後にした。
ディカプリオ本人に会ったことはないが、彼と仕事をした人には大勢会ってきた。10年以上彼のスタントを務めてきた男性によると、とてもいい奴で、冗談もよく言うし、浮ついたところは皆無だという。彼を知る人はみんなそう口をそろえる。そんな評判を聞くと、私もうれしくなる。
今より若かった頃は、自分が「ディカプリオのそっくりさん」で通っていることに今より抵抗があった。誰だって他人の似姿ではなく、自分自身を見てほしいと思うものだ。それでも、そっくりさんの仕事をするうちにそこは割り切れるようになった。
「苦痛の種」に今では感謝
イベントに行くと、誰もがとびきりの笑顔を見せたり、頰を赤らめたり、時には涙ぐみながら私に近づいてくる。映画を通じて、ディカプリオがどれほど深くファンの心を動かしたか、改めて気付かされる。大好きなスターに会えた気分になってうれしそうにしている人たちを見ると、こっちまでうれしくなる。
そんな経験を積むうちにベン・コーニッシュとして見られなくてもいい、みんなに喜んでもらえるなら満足だ、と思うようになった。
『最終絶叫計画5』の撮影でプロデューサーのデービッド・ザッカーと親しくなった。撮影が終わる頃、彼はこう言ってくれた。「ベン、君に最初に会ったときはレオそのものだと思ったよ。うり二つで度肝を抜かれた。だけど3週間付き合ってみて、今じゃ君はベン以外の何者でもない」
最高にうれしい言葉だった。
そんなわけで今では「レオ様に激似」の自分をまずまず受け入れている。おかげで信じられないほどぶっ飛んだ面白い経験もできた。それも全てこのビジュアルのたまもの。とても感謝している。