最新記事

アニメ

新作アニメ『あの夏のルカ』、「同性愛が裏テーマ」説は本当なのか

How Gay Is Pixar’s “Luca”?

2021年7月9日(金)12時06分
マリッサ・マルティネリ

それでも、ディズニー映画ではとかく登場人物の性的アイデンティティーが話題になりやすい。『アナと雪の女王』や『メリダとおそろしの森』などでも、同性愛的な世界観が指摘されてきた。

なぜか。宣伝上手なディズニーが、巧みに作品中の「ゲイっぽい場面」を強調して話題作りをしているからだ。たいていは話の筋とは関係なく、よほど注意深い観客でなければ気付かないような場面(例えば『スター・ウォーズ』シリーズにも、よく探せば女性同士のキスシーンがあったりする)なのだが、誰かが指摘し、いったん噂に火が付くと、もう止まらない。

その点、ピクサーはかなり慎重だ。例えば『2分の1の魔法』には、マイナーな登場人物が同性の恋人の存在を明かす場面があるが、それを大げさに宣伝しないだけの良識があった(そもそも登場人物がマイナー過ぎて、誰も気にしなかった)。

一方、「ゲイっぽい場面」を宣伝に利用したがるディズニーは、伝統的に同性愛をネガティブに描いてきた。実写版『美女と野獣』のル・フウはかなりゲイっぽいが、しょせん悪役だ。

その後の『ラーヤと龍の王国』や実写版『ムーラン』にも、同性愛的な気配を感じさせる場面はある。しかし作品自体がそれを主張することはない。同性愛の映画と見るかどうかは観客次第。心理学のロールシャッハ検査と同じで、そこに何を読み取るかは観客の判断に委ねられる。

『あの夏のルカ』もそうだ。この作品が描くのは同性愛の世界なのか? 監督は否定しているが、その視点で見れば同性愛の世界に見える。ルカとアルベルトは恋人なのか、単なる友人なのか。この映画は同性愛のカミングアウトを寓話的に描いているのか。

正解はない。じっくり見つめ、自分なりの答えが見えてきたら、それでいい。

©2021 The Slate Group

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米EV税控除、一部重要鉱物要件の導入2年延期

ワールド

S&P、トルコの格付け「B+」に引き上げ 政策の連

ビジネス

ドットチャート改善必要、市場との対話に不十分=シカ

ビジネス

NY連銀総裁、2%物価目標「極めて重要」 サマーズ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS攻撃「直撃の瞬間」映像をウクライナ側が公開

  • 3

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前の適切な習慣」とは?

  • 4

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 5

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 6

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 7

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 8

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 9

    元ファーストレディの「知っている人」発言...メーガ…

  • 10

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 10

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中