タイの「物言う」K-POPファン、トゥクトゥク・タクシーに救いの手
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バンコク市内の「トゥクトゥク」(三輪バイクによるタクシー)運転手らは、ファンが資金を出し合うK-POPの広告を車体に掲示することで月約600バーツ(19ドル、約2013円)の収入を得られるようになった。5月、バンコクで撮影(2021年 ロイター/Chalinee Thirasupa)
バンコク市内で「トゥクトゥク」(三輪バイクによるタクシー)の運転手として働くサムラン・タンマサさん(39)。新型コロナウイルスによるパンデミック以前には、K-POPのスターであるジェシカ・ジュン(元少女時代のジェシカ)の名前などまったく聞いたことがなかった。
だが、観光需要が失われた今、サムランさんの生活を支えてくれるのは、この歌手を愛するタイ国内のファンたちである。
明るい緑に塗られた彼のトゥクトゥクは、この1年以上もの間、ほぼ空車のままだった。だがここ数カ月は様変わりした。ファンが資金を出し合うK-POPの広告を車体に掲示することで月約600バーツ(19ドル、約2013円)の収入を得られるようになった。
ビニールシート製のバナー広告に描かれたジェシカ・ジュンの画像を見やりながら、サムランさんは「収入が増えたといっても、世間的にはたいした額ではないかもしれないが、私たちにとっては大きい」と話す。
トゥクトゥクにアイドル応援広告
タイにとって非常に重要な観光産業はパンデミックにより壊滅状態だ。特に厳しい打撃を被っているのがバンコク名物であるトゥクトゥクの運転手たちで、人影の少ない街角で客を待ちつつ、増え続ける借金を嘆くしかない。
かつてのサムランさんは、市内で外国人観光客を運び、1日に約1500バーツ(47ドル)稼いでいた。だが2020年には入国者数が85%も減少し、サムランさんの稼ぎはほとんど無くなってしまった。この先数カ月、タイが現在の厳しい水際対策を緩和する見込みはない。
だが今年、予想もしなかった方向から助けはやってきた。政治的な不満を抱く一方で、K-POPに夢中になっているタイの若者たちだ。彼らは応援するアイドルの誕生日やアルバム発売を祝う広告を公共交通機関に掲出するのを止め、代わりにトゥクトゥクや路上の屋台といった草の根ビジネスに広告費を回すようになったのである。