最新記事

ロック

「3分過ぎても歌が始まらない!」 あなたは『プログレ』を知っていますか?

2021年6月1日(火)18時00分
馬庭教二 *PRESIDENT Onlineからの転載
プログレッシブロックバンドyesのブカレスト公演

1968年の結成以来、活躍を続ける「プログレ」の雄、yesのブカレスト公演から。Bogdan Cristel - REUTERS


1960年代末から1970年代にかけて、日本では「プログレッシブ・ロック」が大ブームになった。当時、中学生だったKADOKAWAエグゼクティブプロデューサーの馬庭教二さんは「初めて聞いたときの衝撃は忘れられない」と振り返る――。

※本稿は、馬庭教二『1970年代のプログレ 5大バンドの素晴らしき世界』(ワニブックス)の一部を再編集したものです。

始まりは級友が持ってきた一枚のLP

私が初めてプログレを聴いたのがいつだったか、正確な日付は思い出せないが、1973年の4月だったことは間違いない。その時私は、山陰の小都市に住む中学二年生だった。中二のクラス替えで急速に仲良くなった友人Nが、ゴールデンウィークの始まったある日、我が家に一枚のレコードを持ってきたのである。

「おまえ、イエスって知っとるか」
「?」

イエス・キリストのことでないことだけはわかった。

「まあ、聴いてみろ。今、一番注目されているイエスの、一番新しいアルバムだ。イギリスのグループで、プログレッシヴ・ロックっちゅうらしい」

Nは自信満々の面持ちで、カメレオンのように鮮やかな緑色のアルバムを取り出した。

イエス、プログレッシヴ・ロック......。何のことやらわけがわからない。単純極まりないバンド名も、プロなんとかという言葉もそれまでに知っていた音楽の世界のものとはどうも印象が異なる。当時の私は、深夜ラジオのヒットチャート番組を通し、「洋楽」というものを真剣に聴き始めたころだった。今、思い出せるのは、それまで出会ったことのない何かと出会えそうな予感がしたことだ。

そのあとの20分が、今日に至るプログレ人生の始まりとなった。

再現! 名曲「危機」の18分45秒

以下、「危機」をご存知の方ならわかってもらえるだろう、私がこの曲を初めて聴いた時の、感じたこと思ったことの再現である。

......鳥のさえずり、川のせせらぎの音が少しずつ高まっていって、突然、大音量のバンドサウンドに突入した。バンド演奏はこれまでに聴いたことのない種類のもので、ギターが奏でるメロディも、ドラムとベースが作り出すリズムも、まったくわけのわからないものだった。

すると「アー、タッ」「アー、タッタッ」というコーラス(これはいったい何だ?)をきっかけに曲調が変わり、ようやく「歌」が始まった。ここまですでに3、4分たったろうか。こんなに長い時間歌が出てこないのにも驚かされる。軽快で気持ちのいいメロディだが、ボーカリストの声は男なのに女の声のように高く、ちょっと掠かすれた妙な声質だ。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

ECB総裁、欧州経済統合「緊急性高まる」 早期行動

ビジネス

英小売売上高、10月は前月比-0.7% 予算案発表

ワールド

中国、日本人の短期ビザ免除を再開 林官房長官「交流

ビジネス

独GDP改定値、第3四半期は前期比+0.1% 速報
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 6
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 7
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 8
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 9
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 10
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中