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あなたが仕事を始めないのは「やる気が出るのを待ってる」から 目からうろこの心理療法ACTの極意とは

2021年4月8日(木)11時35分
岩澤里美(スイス在住ジャーナリスト)

コロナ禍によるテレワークでは仕事とプライベートのめりはりがつきにくく、なかなか仕事に集中できないという人も多いが──。RekaReka - iStockphoto

<「仕事を始めたいけど、イマイチ気分が乗らない」「やる気が出ない」「自信をもって仕事にのぞみたい」......。そんな悩みをもつ人は少なくない。一体どうすればいいのだろうか?>

自信満々でいられる人は、世の中そう多くない。もっと自信があったら、あれもできるこれもできると思ったことはないだろうか。筆者も自信がもてなかったり自信を失いかけたりして悩んだことがある。そんなとき、自己啓発本をいろいろ読んでみたものの、あまり腑に落ちなかった。

今年1月末に発売された『自信がなくても行動すれば自信はあとからついてくる』(ラス・ハリス著、岩下慶一訳、 筑摩書房)は、自信がない状態から「自信がもてる方向へ」と導いてくれる本だ。ACT(アクト)という心理療法を使い、読者に繰り返しエクササイズに取り組むよう勧める。よくある自己啓発本とは違うアプローチを知りたい人は、手に取る価値があるだろう。

版元によると発売後1カ月で重版が決定し、注目度は高い。どんなハウツーが説かれているのか。訳者・岩下慶一氏へのインタビューも交え、本書の要点を紹介しよう。

ACT本は、よくある自己啓発本ではない

本書は『The confidence gap』(2010年初版)の翻訳本だ。オーストラリア在住の精神科医、ラス・ハリスによる一般向けのACT本『幸福になりたいなら幸福になろうとしてはいけない』『相手は変えられない ならば自分が変わればいい』に続く日本語版シリーズの第3弾だ。

第1弾の『幸福に~』は30カ国でヒットし、日本語版も12刷と驚くほど売れている。2冊目『相手は~』はとくに男女のパートナーシップの改善法を説いている。

ACT=アクセプタンス&コミットメント・セラピーは、アメリカの心理学者スティーブン・C・ヘイズが、うつ症状の治療のために開発した。1990年代から徐々に広まったが、効果が非常に高かったため、現在では不安やストレスといった心の不調のほか、麻薬中毒の治療にも使われている。ACTの専門家であるハリスもこれによって自身の不安を乗り越えてきたひとりだ。

ACTは日本のクリニックでも実践されているが、コンセプトは複雑で奥深い。専門書が多数あるなか、一般の人たちが日常的に取り組めるレベルまでかみ砕いたのは、『幸福に~』が初めてだったという。

訳者の岩下氏は、シリーズとの出合いを次のように話す。
「僕は心理学が専門ではないため、『幸福に~』の訳を依頼されたときはちょっと戸惑いました。でも、ACTについて勉強しながら訳していき、内容も面白くてとても楽しい仕事になりました。本書に出てくるエクササイズもすべてやりました。自分の専門ではなかったがゆえにどう表現したら理解しやすいかがよくわかったので、逆によかったですね」

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