あなたが仕事を始めないのは「やる気が出るのを待ってる」から 目からうろこの心理療法ACTの極意とは
本書には「なるほど!そういう見方もあるのだ」という点がいくつも出てくる。まずは、ACTとほかの心理的アプローチとの違いをはっきりさせておこう。
① ACTは行動を重んじる:自分の望む人生の助けになることを実行する。逆に役に立たない場合は行うべきではない。
② ACTは宗教でも精神世界の教養でもない:「人との比較をやめよう」「自分を愛そう」「理想の状況を想像すれば実現する」というような特有の価値や真理のようなものはACTにはない。価値や信条(自分軸といってもいいだろう)は自分で見つけ出す。
③ ACTは瞑想ではない:ACTは呼吸や現在の行動に集中することを重視するが、瞑想のようにリラックスすることは目的ではない。
④ ACTは悟りへの道ではない:ネガティブなことや苦痛に感じることを払い去る方法でもない。それらは当然あるものとして、それを活かす道を探るメソッドである。
(『幸福になりたいなら幸福になろうとしてはいけない』ラス・ハリス著、岩下慶一訳、 筑摩書房、2015年刊 「第19章」より)
ACTの基本コンセプトは、「心を変えるのは難しい、しかし行動は(心のブロックがあっても)変えやすい。まず行動から変えていけば、心の状態は時間差を経て変わる」という考え方だ。
自信満々で取り組むなんて間違い
岩下氏に本書『自信がなくても行動すれば自信はあとからついてくる』でもっとも印象に残った点を挙げてもらった。
「衝撃的だったのは、自信をつけた状態で何かに取り組もうとすることは間違いだという指摘です。自分のことを考えてみたのですが、僕はテニスが大好きで、試合のときに自信をもって臨もうといつも思っていました。でも、そう思って自信が出たかというとそうではなかったのです。本書では、自信なんて気にしなくていいから、とにかく、いまやっていることに意識を向けてただやるんだ!というのです。確かに、自信がつく状態を待っていたら10年経っても試合前に自信満々にはならないでしょうね」
いまやっていることに集中するというのは、ACTでもっとも重要なポイントだ。余計なことを考えず現在の行動に集中すると、雑念が起きにくくなる。また起きたとしてもすぐに受け流せる。そして日常的にこれを心がけていると、重要な行動をする際にも集中できるようになるのだ。
集中が必要な理由はもう1つある。うまくいくだろうか、嫌なことが起きるのではないかといった心配や不安(ハリスは「心配の霧」と呼んでいる)がたとえあったとしても、現在に集中していればそれらに影響を受けないからだ。
ハリスは「心配するのをやめろ」というのはもっとも役に立たないアドバイスだと言う。なぜなら、心配はいくら追い払っても起こってしまう感情だからだ。心配は追い払わずに「自然にやり過ごす」ことにすればいい。