最新記事

マインドフルネス

あなたが仕事を始めないのは「やる気が出るのを待ってる」から 目からうろこの心理療法ACTの極意とは

2021年4月8日(木)11時35分
岩澤里美(スイス在住ジャーナリスト)

newsweek_20210407_024706.JPG

ラス・ハリス著、岩下慶一訳の一般向けACT本 第3弾『自信がなくても行動すれば自信はあとからついてくる』(筑摩書房)

本書には「なるほど!そういう見方もあるのだ」という点がいくつも出てくる。まずは、ACTとほかの心理的アプローチとの違いをはっきりさせておこう。


① ACTは行動を重んじる:自分の望む人生の助けになることを実行する。逆に役に立たない場合は行うべきではない。
② ACTは宗教でも精神世界の教養でもない:「人との比較をやめよう」「自分を愛そう」「理想の状況を想像すれば実現する」というような特有の価値や真理のようなものはACTにはない。価値や信条(自分軸といってもいいだろう)は自分で見つけ出す。
③ ACTは瞑想ではない:ACTは呼吸や現在の行動に集中することを重視するが、瞑想のようにリラックスすることは目的ではない。
④ ACTは悟りへの道ではない:ネガティブなことや苦痛に感じることを払い去る方法でもない。それらは当然あるものとして、それを活かす道を探るメソッドである。
 
(『幸福になりたいなら幸福になろうとしてはいけない』ラス・ハリス著、岩下慶一訳、 筑摩書房、2015年刊 「第19章」より)

ACTの基本コンセプトは、「心を変えるのは難しい、しかし行動は(心のブロックがあっても)変えやすい。まず行動から変えていけば、心の状態は時間差を経て変わる」という考え方だ。

自信満々で取り組むなんて間違い

岩下氏に本書『自信がなくても行動すれば自信はあとからついてくる』でもっとも印象に残った点を挙げてもらった。

「衝撃的だったのは、自信をつけた状態で何かに取り組もうとすることは間違いだという指摘です。自分のことを考えてみたのですが、僕はテニスが大好きで、試合のときに自信をもって臨もうといつも思っていました。でも、そう思って自信が出たかというとそうではなかったのです。本書では、自信なんて気にしなくていいから、とにかく、いまやっていることに意識を向けてただやるんだ!というのです。確かに、自信がつく状態を待っていたら10年経っても試合前に自信満々にはならないでしょうね」

いまやっていることに集中するというのは、ACTでもっとも重要なポイントだ。余計なことを考えず現在の行動に集中すると、雑念が起きにくくなる。また起きたとしてもすぐに受け流せる。そして日常的にこれを心がけていると、重要な行動をする際にも集中できるようになるのだ。

集中が必要な理由はもう1つある。うまくいくだろうか、嫌なことが起きるのではないかといった心配や不安(ハリスは「心配の霧」と呼んでいる)がたとえあったとしても、現在に集中していればそれらに影響を受けないからだ。

ハリスは「心配するのをやめろ」というのはもっとも役に立たないアドバイスだと言う。なぜなら、心配はいくら追い払っても起こってしまう感情だからだ。心配は追い払わずに「自然にやり過ごす」ことにすればいい。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米、台湾への武器売却承認 ハイマースなど過去最大の

ビジネス

今回会合での日銀利上げの可能性、高いと考えている=

ワールド

中国、「ベネズエラへの一方的圧力に反対」 外相が電

ワールド

中国、海南島で自由貿易実験開始 中堅国並み1130
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 9
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 10
    【銘柄】「日の丸造船」復権へ...国策で関連銘柄が軒…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 5
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 10
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中