最新記事

音楽

ダフト・パンクと松本零士、その忘れ難きコラボ

Daft Punk’s Anime Changed My Life

2021年3月20日(土)15時00分
アレグラ・フランク
インターステラ5555

松本零士がミュージックビデオのアニメを手掛けている TOEI ANIMATION/DAFT LIFE LTD./VIRGIN RECORDSーSLATE

<『インターステラ5555』はマイナーだが音楽とアニメを融合し物語をまとわせた名作だ>

ロボットを思わせる謎めいたヘルメット姿で知られたフランスの人気テクノユニット、ダフト・パンクが2月、解散を発表した。ここ数年は活動休止状態で、事実を追認しただけと言えなくもないが、1つの区切りには違いない。

ダフト・パンクはデビューから28年の間に数々の素晴らしい作品を生み出してきた。だが私が最も面白いと思い、かつ強い影響を受けたのはコンサートでもアルバムでもない。『インターステラ5555』というタイトルのアニメ映画だ。ダフト・パンクの代表作とは言えないかもしれないが、音楽とアニメという異なるジャンルのアートを融合させた名作だ。

本作は2001年にリリースされたダフト・パンク2枚目のアルバム『ディスカバリー』に合わせて作られた。「ワン・モア・タイム」などユニットを代表する楽曲が何曲も含まれている。母国フランスはもちろん、アメリカでもこのアルバムは大ヒット。なかでも「仕事は終わらない」はリリースから10年近くたった後に、カニエ・ウェストのヒット曲「ストロンガー」がサンプリングという形で新たな命を吹き込んだ。

『ディスカバリー』は楽しいアルバムだ。ノリのいいダンス音楽でディスコ的である一方で、その核には強いSF感がある。ロボットの扮装をするようなダフト・パンクのコンセプトを体現するアルバムだったわけだ。そんな音の世界に物語の筋と美しい映像を組み合わせたのが『インターステラ』だった。

コラボしたのは『銀河鉄道999』や『宇宙戦艦ヤマト』で知られる松本零士だ。アルバムの個々の楽曲のミュージックビデオとして作られた短編をまとめたもので、続けて見ると1時間強の映画になる。

音楽が感情をかき立てる

遠く離れた銀河、青い肌をした人々が暮らす惑星から、人気のポップバンドが異星人たちによって拉致される。そして異星人の悪の首領から、たくさんのヒット曲のレコード(具体的には5555枚)を制作するよう命じられる。

命令に従えば、首領による宇宙支配を手助けすることになる。そのことを知ったバンドの面々は悪者たちを撃退し、脱出に成功する──。

幼心に衝撃を受けた

私が初めて本作を見たのは、まだ小学生だった01年の夏だった(完成は03年なので、放映されたのは前半の一部)。寝る時間が過ぎてもテレビにクギ付けになって見ていた。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

米・イランが間接協議、域内情勢のエスカレーション回

ワールド

ベトナム共産党、国家主席にラム公安相指名 国会議長

ワールド

サウジ皇太子と米大統領補佐官、二国間協定やガザ問題

ワールド

ジョージア「スパイ法案」、大統領が拒否権発動
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 6

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 7

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 8

    「裸に安全ピンだけ」の衝撃...マイリー・サイラスの…

  • 9

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 8

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 9

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中